勇者パーティから追い出されたので移動式料理店はじめます。

闘技場 ページ15

一週間後、ユリ達は闘技場の受付を通り参加者が集まる場所へ移動した
ユリはローブのフードを被り顔を隠して用意された武器を手に取った
防具は自由だが武器は制限されている、まあ各職業の武器が用意されているだけマシだろう



「う、うう.....緊張しますぅ.....」


「大丈夫、どうにかなるって！私が頑張って攻めるからさ！」


「.....私が、魔獣の攻撃受ける」



皆は気合を入れて頷きあった
しかし、ユリ達を見る視線は案の定厳しかった
他の参加者からは女パーティが闘技場で茶会をしに来たとくすくす笑われてしまう
ユリ達は観客の肩慣らし程度に思われているのか、初めの出場者となった
.....この子達は緊張しているみたいだけど、私は全力でサポートさせてもらうわ
ユリが決心して扉を開けると、男達の歓声で埋め尽くされフウヒは肩を震わせた
ミズサが肩を抱くと落ち着かせるように深呼吸する
そしてそんなことを繰り返していると檻に入った巨体な魔獣が連れて来られた



「ひあぁ！むむむ、無理ですぅ.....」


「だ、大丈夫大丈夫！」


「.....命の危険」



ミエが正論を言うとフウヒはもう倒れてしまいそうだ
そんなフウヒ達を気にもせず檻が開けられ、巨大な蛇のような魔獣は涎を垂らす
此方を威嚇しながら近付いてくるその様子に、フウヒは生まれたての子鹿のように震えている
この蛇の装甲は堅く、並以下の剣では攻撃は与えられないだろう
王華はひとりで倒してたけど......
ユリは王華の馬鹿らしい強さを思い出しながら床にしゃがむと、杖で魔法陣を書き始めた



「ユリ.....？」


「すぐにできるから、ミエは魔獣の注意を引き付けて！その間にミズサは攻撃、フウヒは回復よ！」



ユリがそういうと素直に聞いてくれたようでミズサは声を上げながら魔獣に向かっていった
攻撃はほとんど通っていないだろうが、それでも魔獣へ痒み位は与えられるだろう
......こんな魔獣を出すなんて、私達は完全に見世物ね



「いやああっ！？」



突如蛇の身体がしなりミズサにズドン、とぶつかった
近くにいたミエは骨が折れる鈍い音を間近で聞いて顔を歪ませた
巨大な蛇の身体の強烈な一撃にミズサは壁の方へ追突する
慌ててフウヒは涙を浮かべながら回復を掛けた



「み、ミズサさん！回復(ヒュリク)！」



砂煙が上がって何も見えないが、顔色が青くなるパーティメンバーとは反対に観客達は大盛り上がりだった

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