十七発目 おはよう、目覚めはどう? ページ22
人の話し声で目が覚めた。
目の前に広がるのは天井、肌に感じるのは床の冷たさと痛み…ではなく、暖かいふわふわしたものだった。
身体を起こすと清潔な白いシーツとベッドが目に入る。
こんなにいいものに寝たの、初めてだ。
なんだかちょっと心が踊る。
昨日は…どうしたんだっけ?確か、おそ松達が来て、それで……髪の毛切ろう、ってなって、断って…その後どうしたっけ。
記憶がすっぽ抜けてる…。くっそ、もう年か…?
…あ、そういえば、数年ぶりにアンナの夢を見た。
大丈夫、って言ってくれたなぁ。ごめんねアンナ。まだまだ強くなって、絶対君に届けるから。言えなかった言葉とか。
『…アンナ……』
「___あ、おはようAちゃん!良かった…」
桃色の人…トド松が部屋の扉のところにいた。
ほっ、と安堵の息をもらしている。
私の抜けている記憶となにか関係があるのかな。
おはよう…か。アンナ以外に言ったことないな。
言う相手が居なかったし。
「…やっぱり、返してくれないか。昨日、ごめんね…僕のせい、だよね。気にしてる?」
…?なにをきにするのだろ…あ、そうか。
『…別に。おはよ。』
勝手に上がり込んだことだ。きっとそうだ。
というか早く帰れよ…なんで一晩中いるんだよ。
「…うん……あ、朝ごはん出来てるよ、食べよっ?」
きゅるん、と聞いてくるあざといトド松。食べよっ?じゃねぇよ帰れって何勝手にしてくれてんの?
『…朝ごはんとかいいよ、帰って。』
「そんな事言わないで、ね?」
…悲しそうな顔。ごめん。でも私も帰って欲しいの。
帰って、ってもう一度言おうと思ったら"ぐきゅるるるる…"と鳴った。やばい。お腹空いた。
「…ぷっ……お腹空いてるんじゃん、食べよ?」
トド松に手を取られる。そのまま布団から降りた…けど、なんか、昨日みたいに怖くはない。
何かがおかしい。
あったかい。振り払おう、とは、思わない…。
「…あれ、触れる…!!わぁ、おそ松兄さーん!!みてみて、手つないでるの!!いいでしょ!!」
トド松が急にどやぁ、と居間にいるおそ松たちに自慢している。
自慢すること、なのかな。
あ、今なら、そこまで怖くない…し…恐怖が戻ってこないうちに済ませてしまおうか。
『…あの、さ。私、髪、切る。』
小さく、ちょっとずつだけど言葉を紡いでいく。
生まれて初めて、誰かにお願いごとをした。
その日の目覚めは、なんだかいつもよりも心地が良いように感ぜられた。
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れい - おそ松兄さんがいいです!!大好きなんです!更新頑張ってください! (2016年1月16日 19時) (レス) id: 405b985d2c (このIDを非表示/違反報告)
郷 - おそ松オチがいいです!頑張ってください! (2016年1月14日 15時) (レス) id: 98c5b52946 (このIDを非表示/違反報告)
優維 - おそ松がいいです!! いつも面白い作品を、ありがとうございます!! (2016年1月14日 7時) (レス) id: 845e7660f5 (このIDを非表示/違反報告)
ソメイヨシノ(プロフ) - はるさめさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるとすごい嬉しいです…!あ、なんか目頭が熱く…(´;ω;`)ウッ…こちらこそ、良縁がございましたようで何よりです!是非楽しんでくださいね! (2016年1月10日 16時) (レス) id: 55914f348c (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - あなたの作品で占いツクールを知りました!ありがとうございます!! (2016年1月10日 13時) (レス) id: f5fb11865f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソメイヨシノ | 作成日時:2015年12月22日 1時