十三発目 一瞬の暖かさは本当に一瞬 ページ17
それから、新しいメイドがプリエーデ家にはやってきた。
名はアンナ。純日本人の黒髪で、飾らない笑顔が良く似合う人であった。
アンナ、は漢字で庵奈と書いた。
アンナはいろいろなことを知っていて、繊細で、強かで、美しい女性の象徴とも言えるような人だった。大和撫子そのもの。
そんな彼女は、Aに忠誠を誓っていた。愛を知らないAにたくさんの愛を注いでやっていた。
口癖のように「Aお嬢様」と笑顔で話しかけて、算術、漢字、英語…いろいろなことを教えてはAの幼いながらも難しい内容の話を嬉しそうに聞いていた。
しかしAに関わりを持ったことで疎まれるようになってしまう。
己を責めやすいAはそれを気にかけるのは当たり前のことで、
『アンナ、私と関わったらダメ。』
と心配そうにずっと言っていた。
アンナはどこかさみしそうな笑顔を浮かべては
「…お嬢様、私は、平気です。お嬢様のおそばに居させてください。」
とそればっかり。一方通行の想いはすれ違い、交わることは無かった。
どちらも信念を曲げられず、届かない想いはある出来事を境に終わりを告げた。
もちろん、悪い方向へ。
それは、アンナの死。
首を吊って、自らの命を絶った。
遺書はエドワードとセルジュ、そしてA個人に宛てて書いてあった。
その中身は、内容は、幼かったAを傷つけるには充分過ぎた。
内容には、
「Aお嬢様
私は、もうどうしたら良いかわかりません。
普通にしているだけで疎まれる。転ばされる。怪我をする。
…何故だか、わかりません。
お嬢様と出会えて良かった。それと同時に、出会わなければ、私が、こうなることも無かった。
出会わなければ、良かった…そう思ってしまっている一方で、出会えなかったらきっと寂しいままだったと思います。
ありがとう。そして、貴方が、憎い。
どうかお強く生きてくださいませ。 Anna」
と。出会わなければ良かった。その一言がAの心を貫いて、ずっと心に残って、蝕んでいった。
その日が、丁度Aとイレアナの誕生日だったなんて何かの皮肉とでも言いたい。
その夜に、Aはナイフと最低限の食料、己の力量のみを信じて外に飛び出した。幸いなことに運動は得意だったためぐんぐんと屋敷からの距離が離れた。
その走りは、人に、視線に、周りに怯える脱兎の様だった。
それと同時に、獲物を切り裂く狼の様でもあった。
十四松目 誰の所為…?そんなの、決まってる。#貴方side→←十二発目 瞳の色と愛され基準
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れい - おそ松兄さんがいいです!!大好きなんです!更新頑張ってください! (2016年1月16日 19時) (レス) id: 405b985d2c (このIDを非表示/違反報告)
郷 - おそ松オチがいいです!頑張ってください! (2016年1月14日 15時) (レス) id: 98c5b52946 (このIDを非表示/違反報告)
優維 - おそ松がいいです!! いつも面白い作品を、ありがとうございます!! (2016年1月14日 7時) (レス) id: 845e7660f5 (このIDを非表示/違反報告)
ソメイヨシノ(プロフ) - はるさめさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるとすごい嬉しいです…!あ、なんか目頭が熱く…(´;ω;`)ウッ…こちらこそ、良縁がございましたようで何よりです!是非楽しんでくださいね! (2016年1月10日 16時) (レス) id: 55914f348c (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - あなたの作品で占いツクールを知りました!ありがとうございます!! (2016年1月10日 13時) (レス) id: f5fb11865f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソメイヨシノ | 作成日時:2015年12月22日 1時