【d!】世界崩壊までのカウントダウン (ページ8)

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甘美ナ　#3 ページ8

扉を抜けた先には、倒れたグリムとその近くに一人の青年の姿があった。
男にしては少し長い茶髪に、毛先だけが赤に染まっている髪、肌の色は白い方だ。
黄色の瞳はグルッペンたちを見つめる。

「なぁ、俺達の宝物に手を出していいと思っとるんか?」

グルッペンの問いに、青年は答えようとしない。
それどころかそこから行動する気配もない。
オスマンは青年を睨み、呪術を唱える。

「破壊の番人よ、その名を示せ。我が身は紅。すべてを壊し無にせよッ!」

背後の窓ガラスが割れ、青年の方へと飛ぶ。
青年は鎌を生み出し一回転させた。
グリムが扱う鎌と似ているが、それよりも小回りがききそうだ。
ガラスの破片を弾き飛ばし、青年は初めて口を開く。

「殺意高いなぁ。俺何もしてねぇじゃん」

その言葉に、グルッペンの頭に血が上った。
右手が小刻みに震えだし、グルッペンは怒りを顕にする。
青年は眠っているグリムの頭を撫でて呟いた。

「大丈夫。俺達が助けてやるから。アリスは安心してろ」

それはとても優しげな顔だった。
愛しい人や親友に対する優しい顔。
あたりが光に包まれて、咄嗟にグルッペン達は目をつぶった。
目を開ければ、そこには青年の痕跡さえ残っていなかった。

「ロボロ。敵性反応は」

グリムの元へ駆寄ろうとしたグルッペンは思い出したかのようにロボロに質問する。
その間にオスマンはグリムを抱え、医務室へと連れて行った。

＜一応消えたで。他の奴らにも伝えとくわ＞

ロボロの声にホッとしたグルッペンは医務室へと急いだ。
扉を開ければ我々国の幹部全員が集まっていた。
心配そうな顔を浮かべたり、中には泣き出しそうな人もそこには居た。

「トントン。大丈夫か?」

そんな中、疲れ切った顔をしていたトントンにグルッペンは声をかけた。
視線を泳がせていたトントンは異様だったのだ。

「え?いや、なんでもないっすよ。ただ書類はよ出してくれへんかなって思っとっただけやで?」

トントンの言葉に圧力を感じたグルッペンは思わず顔を引きつらせる。
どうやら心配はいらなかったようだ。
そう自己完結させて、グリムが眠っているベットに近付く。
ゴクリ、と思わず生唾を飲んだ。
グルッペンはグリムの首筋に触れる。
雪のように白い肌、すらりとした四肢、まつ毛の一本一本にさえ引き込まれそうな感覚。

「…グリム」

体を揺らしてもグリムは身をよじるだけだった。
グルッペンはそれから医務室に籠った。
しんぺい神もそれについて咎めなかった。