【d!】世界崩壊までのカウントダウン (ページ5)

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非日常ノ訪レ　#2 ページ5

季節は巡り、寒い冬から暖かき春へと景色は移り変わった。
桜も五分咲きと言ったところだが、ひとらんらん曰く月光国ではもう満開の時期らしい。
机の上にある我々国幹部の集合写真を撫でて、グリムは笑った。

(もうそろそろ行かなきゃ…)

カレンダーの機能もついている高性能な腕時計を確認したグリムは、
荷物をほとんど置いていない部屋から出て行った。

「あ、トントンさん。また徹夜ですか？」
「えぇまぁ。んでも今から寝ますよ」

すれ違ったトントンに、グリムは声をかける。
トントンの顔色は悪く今にも倒れそうだったからだ。
力無く笑って答えたトントンにグリムは心の中で手を合わせ、目的地へ向かう。
ついた場所は畑。
ひとらんらんが管理をしていて、花や野菜、そして少し離れた場所に動物達が居る。
近くにあるベンチに座り、グリムは空を眺める。
雲一つない、真っ赤な空。
そう。真っ赤に染まった、昼の空。

「ぐッ…」

体の中でザワザワとしているものを抑えて、グリムはもう一度空を見上げた。
真っ青な空は、自然の素晴らしさを見せつけるように存在していた。

「あれ、グリム大丈夫？」

動物の様子を見に来たひとらんらんが、グリムの顔を除くと同時に、
東洋人特有の黒い瞳がグリムの蒼を不思議そうに見つめた。
グリムの顔は青白く、人を心配させる要素が他にもあった。
しかし、そんなこと本人は気付いていないので苦笑いと共に「大丈夫」と答えた。

「本当に？無理してない？」

焦るひとらんらんを目の前にしてグリムは心配をかけてしまった事を反省した。
ボーっとしていると、グリムの視界が白に染まる。
ミカンの様な柑橘系の匂いが鼻を擽り、気温よりも温かいひとらんらんに包まれる。

「グリムはもう仲間なんだ。どっかに行くのも、一人で抱え込むのも許さない」
「ありがとう。私には、もったいない言葉」

グリムは嬉しそうに笑う。
ひとらんらんはグリムを離して、頭をクシャリと撫でた。

「もったいなくないよ。くれぐれも、無理はしない様に」

城へと向かうひとらんらんを見送り、グリムは涙を流した。
とっさに服の袖で拭うが、拭ってもとめどなく溢れてくる。

(ごめん。ごめんね。私は、また、嘘を吐く)

人の善意を踏みにじるとは、こんなにもつらい事なのか。
手が無意識の内に震え、声を出そうにも口が乾いてしまう。

(泣いたのはいつぶりだろう)

蒼の瞳は濁っていて虚ろだ。
ただ確かに時計を見て、グリムは悲しそうに笑った。