ある日の朝 ページ2
「緋織さん、おはようございます。」
「おはようございます、翔さん。」
「翔でいいんですよ、何回言わせるんですか」
「呼び慣れないんです、仕方ないでしょ?」
午前7時50分。
黒のスーツを着たその人は困ったように笑った。
櫻井翔。
それがこの人の名前。
血の繋がりは無いけど、
今となっては唯一の家族のような人。
ある時から付かず離れずの距離で側にいる、
わたしの世話係だ。
「緋織さん、そろそろ行きましょうか。時間です。」
「そうですね、そろそろ。」
車に乗って門をくぐる。
1人で住むには大き過ぎる屋敷をあとにし
私は今日から通う学校へ。
5月も終わり6月に入ったばかりの月曜日。
こんな中途半端な時期に転入だなんて、そうそうないだろう。
信号待ち。
ふと車のバックミラーを見ると翔さんと目があった。
「浮かない顔してますね。」
「そう…かな?よく分からないんです。」
「何がです?」
「今、何が起こっているのか、ですかね?」
「まあ、緋織さんは誰よりも色んな経験、してると思います」
「まぁ…それは自覚してます…」
「でも、今日から新しい学校で出会いも沢山あると思います。
沢山、大切な人を見つけて下さい、緋織さん。」
「はい。…というか翔さん、翔さんこそ敬語やめて下さい。」
「ははっ、痛いところ突かれたな。」
「もう…。」
浮かない顔、そう言われてふと車の窓から外を見た。
空は今にも雨が降り出しそうな曇り空。
まるで自分の心を写したような天気に
軽いため息をつくと、ちょうど車が止まった。
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作者名:hiori | 作成日時:2019年10月3日 2時