fancy!spicy!!sweety!!!【下】

【旅は道連れ】 ページ8

ウォンカが席に着くと、すぐ後ろから車輪を転がす音が聞こえてきた。
オレンジの肌、緑の髪。ウンパルンパが旅行鞄を引き摺りながらやって来たではないか。
心細かった彼は心からホッとした。相手がカカオの取立人だったとしても。


対する小男はニコリともせず「目を離さんぞ」と執念を見せた。
それからくつろぐ体勢を整えてから彼は残りの取立について話し始める。
どうやらもうすぐ目標だった千倍に届くらしい。
あとの残りは瓶半分のホバーチョコで手を打つ、と彼は言った。
その提案がもう少し早ければ……。
ウォンカは真っ暗な海を見つめて、フルフルと首を横に振る。



「もうチョコレートは作らない」

「まさか、あの三人の取引に応じる訳ではあるまい？」

「ヌードルと約束したんだ。自由にするって」



それを聞いて小男は「抵抗すべきだ。パンチを食らわせろ」と物騒な提案をしてきた。
勿論そんな手段を彼が好む訳がない。
心ここに在らずといった様子で、未だに痛む手のひらを見つめ続けている。
本当に条件を飲むつもりなのだと察した小男は、やれやれと肩をすくめてカクテルを口に含む。
だがすぐ思い出したかのように、再度口を開いた。



「アリスはどうするつもりだ」

「アリスなら大丈夫。チョコ嫌いも治ったはずだし、フィクルグルーバーさんが絶対に幸せにするって約束してくれた」

「……今チョコ嫌いが治ったとして、フィクルグルーバーのチョコしか食べられない状況は変わっていないだろう。時が経てばまた嫌いになるぞ」

「……確かに。あ」



その言葉にウォンカのぼんやりしていた目付きが変わった。



「そもそも、君はアリスからフィクルグルーバーとの結婚が幸せだと直接聞いた訳ではないだろう」

「……えぇ確かに！あぁ！？」

「なんだね君はさっきから、人が話している最中に何度も！」



何かあるなら聞かせてもらおうか！？苛立つ小男は椅子から飛び降りて、ウォンカに詰め寄る。
閃き顔の彼は、掌を小男に見せた。スラグワース固い握手をした手だ。
ルーペでのぞき込めば、そこにくっきりと何かの跡が残っている。指輪の跡だ。



「同じものをヌードルが持ってた」

「ヌードル？何故彼女がスラグワースと同じものを」



小男には関連性が分かっていなかったが、ウォンカの頭には幾つもの閃きが宿る。
ヌードルが危ない。アリスも助けなきゃいけない。
小男への説明もそこそこに、彼は操舵室へ急いだ。
北極行き船爆発まであと数秒。



.
.

【星冴ゆる】→←【シンデレラ】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す