【シンデレラ】 ページ7
窓枠の向こうで冬の星が煌々と騒ぐ。
ゴーンと街の鐘の音が、遠くから響いてきた。
それは真夜中を告げる合図でもあり、時間切れの知らせでもある。
仄暗い部屋。頼りないベッドライトが男の輪郭を捉えた。
「今日の事は目を瞑るが、次は無いと思いなさい」
偽りの優しさが込められた生緩い声色。
十二回目の重い鐘声が重なって、申し訳程度に不快感を中和してくれた。
「君は利口な子のはずだよ、アリス」
ひっくり返った世界。男が低く耳元で囁く。
肩越しに揺れてる天井の模様の縁を、視線でなぞった。
意味などない。
甘ったるいプレーンな香りが鼻先を掠める。
チョコ嫌いではなくなったが、やっぱりこの匂いは嫌いだ。
「もうあの男に会うことはないだろうがね」
暗がりの中で、手探りの指先が彼女に触れた。
そう告げられたとしても不思議と悲壮感は湧いてこない。
現実などただそこにあるだけの景色で、夢や希望を持ってさえいれば見える世界は簡単に変えられる。
それが、彼の魔法だ。
私にはもう夢も希望も無くなってしまったけれど。
結局無力な現実をこれからも生きる事になってしまうけれど。
彼が近くにいなくとも、彼の世界を感じることが出来る。
大丈夫。私はこの先もこの思い出で生きていける。
「そろそろこの街を出ていった頃だろう。今頃は海の上か」
唯一、喉を鳴らし嘲笑うその言葉だけが彼女を反応させた。
幸いにも顔は見られていなかったので、胸中の変化を悟られることはない。
何で、どうして。脳内が全て疑問で埋め尽くされた。
残ったあの二人が彼に何かを仕向けたに違いない。
絶望の淵から突き落とされたような感覚。
身体も心も凍り付き、背中から光の射さない深海へと沈んでいく。
もがいた所で逃げ場は無い。息が苦しい。
何処かで鳴ってる腕時計の音が鬱陶しい。
しかし彼女は表に出さず、それらをひたすらに堪えた。
自分以外にもきっと、彼の魔法を、救いを待っている人がいるはずなのに。
瞳を閉じて、彼の魔法を思い出す。
暗闇の中にいても、彼のくれた沢山の光が寄り添ってくれる。
瞼の裏で、彼が笑いかけてくれる。あのグリーンの柔らかな眼差しが見守ってくれる。
「アリス」
無邪気な、歌うような声で名前を呼んでくれる。
魔法の世界は今も何処かに存在している。
もし、私も、魔法が使えたのなら……今すぐこの窓から駆け出して貴方の元へ飛んで行けるのに。
淡紅の花が心と共に純白へ散った。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます！そしていつも最高のお言葉ありがとうございます！最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた！やったー！番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました！ (3月4日 5時) (
レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした！こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません！またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます！一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました！❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました！🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます！ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……！と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……！むめさんの命が助かって良かった……！私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年2月12日 21時
