【a world of my and your own】 ページ43
二人が顔を見合わせて笑い合うまでは良かった。それから二人の視線が甘く絡み合うと……嫌そうな顔をする紳士。
そんな彼を他所に、アリスはウォンカとの距離を縮めた。
彼女の白い手が、ハンカチを持つ彼の手に添えられる。
「痛む?」
「ううん、全然。いや、どうだろう……」
「え?」
「君の顔もっと近くで見れば、治るかも」
潤む上目遣いに胸が鳴って、彼の中の愛おしさが溢れて止められなかった。
再び二人の距離がゼロになる。穏やかで優しい、触れるだけの口付け。
お互いの熱度を感じ取って、自分の熱情と交換する。
ほんの数秒後、彼女が彼の胸を押し返した。
「う、ウィリー!」
「ごめん……いやでも今のは君も悪いよ」
「な、なんで」
「キスしたくなる顔してた」
「そ、そんな顔してない!」
「いや、してたよ!」
窘める声でさえ甘い声色を持つアリス。小競り合いを始める二人に紳士はいよいよ嫌気がさしてきた。
「君ってもしかして砂糖で出来てたりする?」という甘ったるいロマンスを呼び起こしそうな台詞を遮って声を上げる紳士。
「もういい!先に行くぞ!チョコソースは全部私が頂く!」
「え、ダメだよ!」
ウォンカの制止もよそに、紳士はいつの間に用意していたのか飛行準備をしており、レバーを引いて翼開けばあっという間に飛んで行ってしまった。
「なんてこった!僕のチョコソースが無くなっちゃう!急ごう、アリス!」
「うん!」
ウォンカがアリスの手を取り、アリスはウォンカの手をぎゅっと握り返す。
黄昏の街。小さな影を追いかける二人。その顔は世界中の誰よりも幸せそうで、砂糖より甘く、チョコより溶けだす素敵な未来を予感させた。
さてしかし、まだスタートラインに立ったばかりの二人。
これが恋の味だと知ってしまった彼らの恋心が通じ合うのはまた、ちょっと先のお話―――
握った手に、絡み合う指に、二人は夢を描く。全ての素敵なことは夢から始まるのだ。
この先の私の世界に貴方がいますように。
この先の僕の世界に君がいますように。
ずっと貴方が隣で笑っていてくれますように。
ずっと君が隣で笑っていてくれますように。
願わくば貴方もそう想っていますように。
願わくば君もそう願っていますように。
そしてそれが、素敵な現実になりますように。
悪い魔法は王子様の……いや、チョコ職人のチョコとキスに溶けて、知らぬ間に解けてしまっていたとさ。
めでたし、めでたし。
〜Fin〜
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます!そしていつも最高のお言葉ありがとうございます!最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた!やったー!番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました! (3月4日 5時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした!こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません!またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます!一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました!❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました!🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます!ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……!と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……!むめさんの命が助かって良かった……!私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年2月12日 21時