fancy!spicy!!sweety!!!【下】

【ごめんなさい】 ページ41

ウィリー・ウォンカが新しい壮大な夢を語っている最中、前触れなく彼の視界にある人物が映る。
路地裏からおずおずとこちらに歩みを寄せたその人に、彼の顔にはこれ以上ないくらいの笑顔が咲き乱れた。
その様子を見れば、オレンジ色の紳士も近付いてきた人物の顔を見ずとも容易に正体が分かる。
興奮を抑えきれないような声色で、ウォンカがその名を呼んだ。



「やぁ、アリス！」

「ウィリー……あの、さっきは……ごめんなさい。突然叩いたりして……」



申し訳なさそうに目を伏せる彼女はウォンカに向って何かを差し出す。
彼が視線をそれに向ければ、また嬉しそうに頬を緩めた。
ハンカチだ。あの時とは違う柄のハンカチ。受け取ればひんやりと冷たい。
あの時と同じ優しさを受けて、彼はハンカチを右の頬に当て満足そうな顔を見せた。
反対に、アリスの表情は怪訝そうな色を帯びる。



「謝らないで、アリス。僕が悪かったんだ」

「……ウィリー、逆だよ」

「……？あぁ、そっか」



まっさらな頬とは逆側の、赤く色付く頬にハンカチを当て直したウォンカ。
わざとなのか天然なのか分からない彼の行動で、アリスの眉が八の字になりかける。
それを真っ先に察した彼は、やり直す様に先ほど口にした台詞を改めて言い直した。



「謝らないで、アリス。僕が悪かったんだ。気持ちが先走っちゃって……ごめん」

「私もびっくりしちゃって……叩いたのは良くなかったよね……ごめんなさい」

「いいや、君の行動は正しかったぞアリス。公衆の面前であんな破廉恥な行為、一発引っぱたくだけでは足りないくらいだ」



二人の足元でふんぞり返るオレンジ色の紳士。
彼の口から出てきた単語にウォンカは顔を顰めた。
改めて「そんなつもりじゃなかったんだ。本当にごめん」とアリスへ深く詫びを述べる。
彼女も「もう大丈夫だから」と彼の顔を上げさせるが、ウンパルンパの彼だけは納得いっていないらしい。



「私だったら容赦はしないぞ。何だったらもう一発かましてやれアリス」

「まさか！君にあんなことしないよ」

「当たり前だろう！例え話だ！！」

「……僕はただ、ママのチョコをアリスと分かち合いたかっただけなんだ」

「分かってるよ。それ以上の他意は無かったんでしょ？」



唐突すぎて味はよく覚えていないけど。そう続けたアリスは苦笑を浮かべた。
他意が無ければ何してもいいのか！と足元で怒っている紳士。
他意、と聞いてウォンカの表情が微妙な色合いを見せる。



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