【幸せのお裾分け】 ページ37
ウォンカが手元のチョコを眺めていると、笑顔のヌードルが近づいてきた。
立ち上がり、チョコを一欠けら割ってヌードルに差し出すウォンカ。彼女はハッとして彼の顔を見上げた。
大事なチョコを貰ってもいいのだろうか?最初はそう思ったヌードルだったが彼の顔を見て、その考えは必要ないと知る。
「ありがとう」ヌードルがチョコを一口齧れば、美味しさと嬉しさがいっぱいで頬が緩んだ。
それを見たウォンカも、彼女と同じ表情を浮かべる。
それからクリーニング屋の皆にも、一欠けらずつチョコを配った。
アバカス、パイパー、ロッティー、ラリー。
皆で同じチョコを食べる。そして同じように笑って、それが夢見た通り……いや、描いていた以上に幸せだった。
ウォンカも最後の一欠けらの角を小さく齧る。
口に広がるのはあの頃と変わらない味。ずっと大好きなあの味だった。
「どう?覚えていたのと同じ味?」
「あぁ……終わるのが惜しいよ」
ヌードルに聞かれて彼はしみじみと首を縦に振る。
チョコを食べてしまうのが勿体ないと感じたのはこれが初めてだった。
最後の一欠けらを口の中に投げ込めば、彼の心に寂しさが混ざる。
そうか、きっとアリスもこんな気持ちだったに違いない。
薔薇の花弁を取っていた彼女の事を思い出す。
同じだ。彼女も終わってほしくなかったのだ。
「……んん!!」
「どうしたの、ウィリー?」
何かを思いついたのか声を上げるウォンカ。
だが口の中のチョコを咀嚼しようともせず、唇を結んだまま何も喋らない。
そのグリーンの瞳はキラキラを越えてギラギラしていて、あの時と同じだとヌードルは思った。
怪訝そうな彼女の問いにも答えずに、彼は何処かへ走り出す。
彼女が「どうしたの!?」と再度問いかけても、足を止めず人の波を縫ってあっという間に見えなくなってしまった。
アバカスやパイパーたちが顔を見合わせるも、全員頭にクエスチョンマークを浮かべて首を横に振る。
ロッティーはヌードルをちらちら見ながら、何か言いたげに口をもごもごさせていた。
彼女のママが見つかった話を切り出すタイミングを失い、困惑の表情を浮かべるロッティー。
自由な発想を持つのは彼の素敵なところではあるけれど、こういう時は紙一重だな、と一同は思うのだった。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます!そしていつも最高のお言葉ありがとうございます!最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた!やったー!番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました! (3月4日 5時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした!こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません!またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます!一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました!❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました!🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます!ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……!と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……!むめさんの命が助かって良かった……!私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年2月12日 21時