【大団円】 ページ35
地面の唸りはどんどん大きくなり、近くにいた民衆たちも困惑の声を上げた。
唸りの正体が広場中央の凍り付いた噴水へと辿り着いた時、彼らの目論見が明らかとなる。
ミシ、バキバキ―――音を立てて氷に亀裂が入れば―――
「うおぉぉぉ!?」
「どうなっている!?」
噴水から滑らかなチョコが勢いよく吹き上げてきた。
勢いに負けてスラグワースの手が噴水から離れれば、残り二人も更に空高く舞い上がっていく。
このチョコはただのチョコじゃない。彼ら三人組が隠し持っていた裏金だ。
全ての後ろ盾を失った彼らは、小さくなりながら其々が捨て台詞を口にする。
それに対して「効果が切れればそのうち降りられますよ。多分、きっと」なんて適当な返しをするウォンカ。
彼は夢のような噴水の前に立つと、ポケットから何かを取り出して溢れるチョコレートに振り撒いた。
「それではお集りの皆様!ウィリー・ウォンカとその仲間たちで用意したチョコを、存分にお楽しみください!」
三人の男たちが遥か小さくなった空の下、歓声が上がる。
花火のようにキラキラ光る噴水を背にして、アリスの方を振り返るウォンカ。
柔らかにはにかんだ彼は、慈愛の込められた視線で彼女を見つめた。
「ありがとう、アリス。
今までの時間は無駄じゃないって事、大事なのは場所じゃないって事。君が教えてくれた」
だから何も出来ないなんて思わないで。
彼は胸の内を伝えるが、当の彼女はまたいつもの八の字の眉を見せていた。
ほんの少し、頬を赤らめて。
「どうかした?」心当たりのない彼が問いかける。
「あの……幸せにするとかって……どういう……」
「あぁ、言ったでしょ?君を幸せにする役目は僕にしか出来ないって」
「初耳、だけど……」
あれ?そうだった?
やっぱり細かい事は気にならないウォンカ。
まるで生涯を添い遂げるような発言を、意図しているのかどうなのか。
アリスにとっては細かい事ではなく、平然としている彼の考えが分からなくて悶々としていた。
そんな彼女の乙女心さえ彼は知る由もない。
「アリス!」
「わ!?パ、パパ!?」
突然、見知ったフォルムが駆けてきてアリスに覆い被さった。
彼女の父、ポールが大粒の涙を流しながらぎゅうっと彼女を抱きしめる。
ずっと困り顔だった彼女もやっと口元ににっこりと弧を描いた。
微笑ましい二人を眺め伸びをするウォンカ。
澄み渡る空は心地よく、春の訪れの気配を感じ取った。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます!そしていつも最高のお言葉ありがとうございます!最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた!やったー!番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました! (3月4日 5時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした!こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません!またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます!一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました!❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました!🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます!ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……!と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……!むめさんの命が助かって良かった……!私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年2月12日 21時