fancy!spicy!!sweety!!!【下】

【勝利宣言】 ページ34

彼の言葉を信じ、ヌードルとアリスも遠ざかっていく三色を眼だけで追う。
広場を駆け抜ける三人の足がふわりと浮いた時、心配そうな顔をしていた二人の口角がにやりと上がった。
この光景は一度見たことがある。二人共、あの日初めて彼の魔法を見たのだ。忘れる訳が無い。


一瞬でどんどん空へと上がっていく三人組。
泳ぐように手をばたばたさせて、スラグワースは凍った噴水の天辺をどうにか掴んだ。
その足をプロドノーズが掴み、さらに彼の足をフィクルグルーバーが掴む。
空中で連なる三人に向かってしたり顔で声を掛けるウォンカ。



「まさか僕のチョコを食べたりしませんでしたよね？」

「な、なぜだ！？」

「あれ、ホバーチョコですよ。遅効性のある超強力なやつ」



大げさに肩をすくめてみせれば、上空でスラグワースが吠えた。
これで勝ったと思うな！地下には何十億ソブリンにもなるチョコがある！
弁護士に裁判官から陪審員まで、引き込んでしまえばこっちのものだ！
堂々と悪事を明らかにするスラグワースからウォンカが目を逸らす。
それは考えてなかったな、と小さくこぼした。



「ウィリー……？」

「大丈夫だって言ってるでしょ？さぁ、ヌードル！！」



彼がヌードルの名を叫ぶと、いつの間にか姿を消していた彼女が道端の消火栓を叩いた。
アリスは思い出す。先程会ったアバカスから聞かされた作戦を。
しかしそれが合図だったことを知らぬ人たちは、不思議そうな顔をする。
すると間髪入れずにゴゴゴゴゴと街が唸り、地面が大きく揺れ始めたではないか。


よろけるアリスの身体をウォンカが支えた。
「僕に掴まってて」そう言えば、ひしと腕にしがみ付くアリス。
勝ち誇ったような笑みを浮かべれば、上空で状況の分かっていないある男に向かって叫ぶ彼。



「フィクルグルーバーさん、心配しないでください！」



名指しされたフィクルグルーバーは何事だと目を見張る。
アリスもまた、ウォンカの満足げな顔の意図が分からず彼を見つめた。
当のウォンカは大きく息を吸い込んで、地面の唸りに負けないよう大声を上げる。彼らへの勝利宣言を。



「アリスは必ず、僕が幸せにしますから！」



それを聞いてフィクルグルーバーは口元を歪め、スラグワースも似たような表情をして見せた。
やってみないと分からない、なんて事はない。
必ず、フィクルグルーバーとの結婚以上の幸せを恩返しする。
彼は空いていた方の手で、アリスの手を握った。



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