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【帰還】 ページ31

もう、こんな欲に塗れた大聖堂で神になんて祈らない。
縮こまって動かなくなってしまった神父を放っておいて、アリスは因縁の硝子床の元へと戻る。
相変わらず傷一つない見事な障壁。
物に対してこんなにも腹が立ったのはこれが初めてかもしれない。


見えない紳士の活躍に一縷の望みを託し、彼女は瞬きもせずに床をじっと見つめていた。
そして気の所為でなければ「ガコン」と足元で、体感的にはもっと下の方で何かが動いた音がする。
ゴゴゴゴ―――その後で聞いたことの無い重低音が大聖堂に響き渡った。



「君に一目会ってみたかっただけだったのだが、よもやこんな事に巻き込まれるとはな」

「る、ルンパさん……!?いつの間に!?」



アリスが目を見開く。まだほんの数分も経ってないはずだ。
それなのに果敢に飛び立ったオレンジ色の紳士は音もなく、彼女の傍らで腕を組んでいるではないか。



「……どうやらあの二人にとっても今日が最後の審判にならず済んだようだ」

「え……?……あ!」



紳士の視線を追えば、物凄い勢いでタンク内のチョコの水位が減っていく。
身を切るような思いでチョコの渦を見守っていれば、二人分の顔がぱっと現れた。
大きく息をするウォンカとヌードル。
彼ら自身も何が起きたのか分かっておらず、キョロキョロと視線を左右に動かしていた。
そしてウォンカが上を向いた瞬間、チョコに塗れた顔を満面の笑みに変える。



「アリスと……オレンジの小男だ!」

「……あっ!ありがとうー!アリスー!オレンジの人ー!」



硝子越しにも彼らの声がアリスの元へ届いてきた。
オレンジの紳士は控えめに手を振り、アリスは胸を撫で下ろして、熱い涙を零す。



「何とお礼を言ったらいいのか……ありがとうございます……本当に……」

「礼には及ばん。乙女の涙を無視出来るほど薄情な男ではない」



アリスが涙声で礼を述べれば、ウンパルンパなら皆そうした。と彼はふんぞり返った。
彼は胸ポケットからハンカチを取り出すと、彼女に差し出す。



「まぁ、どうしても礼をしたいというのなら、君の自慢のチョコソースを是非ともご賞味願いたいね」



ニヒルな笑みを浮かべ、そう残して彼は背を向ける。
勿論です!お待ちしています!アリスはその小さな背中を、精一杯の感謝を込めて見送った。
その直後、エレベーターの音が彼らの帰還を知らせる。


涙を小さなハンカチで拭って、アリスは駆け出した。
咲き乱れる大輪の花のような笑みで。



.

【おかえり、ただいま】→←【オレンジの紳士】



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設定タグ:ウィリー・ウォンカ , ティモシー・シャラメ , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます!そしていつも最高のお言葉ありがとうございます!最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です‪♡フィクル推し増えた!やったー!番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました! (3月4日 5時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした!こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません!またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます!一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました!‪❤️‍🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました!🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます!ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……!と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……!むめさんの命が助かって良かった……!私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年2月12日 21時

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