【オレンジの紳士】 ページ30
アリスの感情は更に複雑化して思考が迷子になっていた。
目の前にいるオレンジ色の肌を思った小男。
彼を知っている、と言ってもこれが初対面であるが。
薄っすらと、ある日のウォンカとの会話が思い出された。
驚きで声も出ない彼女に彼はごほん、と一つ咳払いをする。
「アリス、自己紹介をしたいのは山々なのだが、いかんせん時間が惜しい。ウォンカが手遅れになる前にな」
「は、はい！」
「言葉通りだ。君の手を貸してくれ」
「私の、手を？」
「あぁ、私の代わりに一発お見舞いしてほしい」
ウォンカの名前を出されて、ようやく彼女の意識が戻ってくる。
オレンジの紳士はそう言いながら告解室を指した。
自己紹介する暇も、迷う暇も、考えている暇もない。
アリスは弾ける様に駆け出して、神父の居る告解室の扉を―――蹴り飛ばしてこじ開けた。
「ヒ、ヒィ！？一体なにを」
「アリス、そこに何か仕掛けがあるはずだ」
「地下へ行く仕掛けはどれ！？」
「そ、そんなもの、ここにはありませんよ！」
怯えながらもしらばっくれる神父。
アリスはそんな彼の顔面目掛けて……厳密に言えば、顔すれすれの壁目掛けて、勢いよく足を蹴り付けた。
バキッ！告解室の壁が悲鳴を上げて、ヒールがめり込む。
神父の顔がサーっと血の気が引いて青くなった。
「私はチョコほど甘くないですよ。神が裁かぬのなら私が罰を下すまで。
今日を最後の審判の日にしたくないでしょう？」
アリスの右手には、鋭く生々しく光る硝子片。
深海より真っ黒な瞳が、神父を恐怖の渦へと引きずり込む。
彼は小さな十字架をチラ見してから、子犬のように震える手でそれを指差した。
それから力が抜けたようにガックリと項垂れる。
「これね！ルンパさん！」
「……よし、後は任せたまえ！」
一瞬、殺伐としたアリスの姿に恐怖を覚えるオレンジの彼。
シンプルな脅迫。一発お見舞いの次元が違った。あれでは一撃お陀仏である。
もう何も失う物がない者の何と恐ろしい事か。
仕掛けが動くと、気を取り直して紳士は背負った機械のレバーを引いて翼を広げた。
そしてジェット機のように飛び上がると、目にも止まらぬスピードでエレベーターへと乗り込む。
「わっ！？」
驚きの声を上げたアリスは自分の右手が硝子片を持っていたことに気付き、慌てて投げ捨てた。
ほんの数分の間に起きた現実味を帯びない出来事。
微かに輝く最後の希望は、唯一彼女だけが信じた彼の御伽噺。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます！そしていつも最高のお言葉ありがとうございます！最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた！やったー！番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました！ (3月4日 5時) (
レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした！こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません！またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます！一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました！❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました！🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます！ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……！と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……！むめさんの命が助かって良かった……！私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年2月12日 21時
