【死刑執行】 ページ26
「ウィリー!ヌードル!」
「「アリス!!」」
ホッと胸を撫でおろすような二人。感動の再会にアリスもそうしたいのは山々だったが、今はどう見てもそんな状況じゃない。
彼女は丁度手にしていた瓶を硝子床に向かって力いっぱい振り下した。
ガン!! 神聖な場所とは場違いの大きな音が響く。
しかし全力だったにも関わらず硝子床にはヒビ一つ入らない。
アリスはもう一度両手を振り上げて、瓶を叩きつける。
依然として、彼らを分かつ境界線は美しいまま。
アリスが何度瓶を振り下しても、強固な硝子は傷の一つも許さない。
向こう側にいる二人の表情が、徐々に暗いものへと変わっていく。
それは硝子板を破れないから、というのも一つの要因だった。
だがそれ以上に、後ろにずらりと三人の影が並んだのが大きな原因である。
「そこまでにしなさいアリス」
「彼らは大聖堂に盗みに入った泥棒なんだ。助ける義理はない」
スラグワースとフィクルグルーバーがアリスを止めに入った。
しかし制止も聞き入れずもう一度、ガツン!と力任せに瓶を叩き付ける。
「このままじゃ死んでしまいます!」
「彼らは罪人だからね。仕方がない。これは罰なのだよ」
「どんな理由であれ、人をこんな風に殺して許される訳がない!」
「殺すなんてとんでもない!泥棒が迷って勝手にタンクの中に入ってしまった、それだけの事だよ」
淡々と、なんてことないように語るスラグワース。
そんな事あってたまるか。彼女は苛立ちを力に変えて、硝子床との奮闘を続けた。
すると今度はフィクルグルーバーが口を開く。
「アリス、君がウォンカを助ける義理が何処にある?
彼は君に毒を盛ったのだよ?あの忌まわしい安っぽい……」
「貧乏人のチョコに。あぁ、すまんフィリックス」
いつもの馴れ合いには見向きもせず、アリスは手を止めない。
そしてついに……幾度目かの試行の後、ピシッ!と硝子が砕ける音がした。
苦渋を喜色に塗り替えるアリス。
ようやく報われる。これまでの苦難は、この時のためにあったのだ。
彼女が瓶を持ち上げ、硝子床にまじまじと視線を這わせた。
……だが、いくら見詰めても床にひび割れは何処にも見られない。
おかしい。確かに硝子の割れる音がしたというのに。
二人を飲み込むチョコレートはもう、胸の辺りまでせり上って来ている。
恐る恐る、アリスは自分の手元に視線を動かした。寒気が、全身を襲う。
割れていたのは……持っていた瓶の方だった。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん、コメントありがとうございます!そしていつも最高のお言葉ありがとうございます!最後まで書けたのもかんなさんの応援コメントのお陰です♡フィクル推し増えた!やったー!番外編は気を長くお待ち頂けたらと思います(笑)ありがとうございました! (3月4日 5時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 本当に最後までお疲れ様でした!こんな素敵な作品に生きてるうちに出会えて幸せです。夢小説でここまで心動かされて感動して毎日の更新が楽しみだった作品はありません!またアフターストーリーも楽しみに待ってます💕ちなみに私はこの小説でフィクル推になりました笑 (3月4日 1時) (レス) @page44 id: af16048ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - えんさん» えんさん、コメントありがとうございます!一番最初にえんさんから頂いたコメントがパワーになっていました!❤️🔥最後までお付き合い頂きありがとうございました!🙏 (3月3日 21時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉🎉ほんとに大好きな作品です✨ (3月3日 21時) (レス) @page44 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - むめさん» むめさん、コメントありがとうございます!ウォンカ夢自体めちゃくちゃ少なくて、私が……やらねば……!と思ってここまで来ちゃいました(笑)嬉しいお言葉ありがとうございます……!むめさんの命が助かって良かった……!私も救われます😭救護活動❤ (2月18日 11時) (レス) id: f0e451cd1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年2月12日 21時