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【フラミンゴ渋滞】 ページ22

車は急遽、高級ジュエリー店から大聖堂へと方向転換する。
車内には違う色の焦りを抱く二人。
アリスはウォンカの無事を祈り、フィクルグルーバーは裏帳簿の無事を願った。


服飾関係のショップが立ち並ぶこのエリアから大聖堂へ向かうには、広場を通って行かなければならない。
例に漏れず彼らの車も、広場へ向かう道を進んで行くのだが……。
猛スピードで過ぎていた景色が徐々に遅くなり……やがて止まった。


「何故止まる！？」と苛立った声を運転手に投げつけるフィクルグルーバー。
運転手は「道が混んでいて……」と怯み、困った顔を浮かべた。


前方には往生する数台の自動車。確かに気付けば辺りから大声やクラクションが鳴り渡っていた。
眉を顰めながら近くを通った警備員を呼びつけるフィクルグルーバー。
この辺りが渋滞するなんて、今まで一度もない。
異常事態に警備員も運転手と同じような顔色を見せた。



「冷凍エビを積んだトラックが事故にあって、散乱したエビを食べにフラミンゴが集まってきてしまったんですよ」

「フラミンゴだと？」

「へぇ！野生のフラミンゴですかね！」



この場でアリスだけが能天気な笑顔を浮かべる。
肩を落とし持ち場に戻る警備員。威圧感で口の中が乾く運転手。
苛立ちを隠し切れず足を組むフィクルグルーバー。
硬直状態の中、再び直通の電話が鳴り響いた。



「アーサーか。いや、分かっている。私も急いで……何？君も？」



君も、という事はスラグワースもこの渋滞にハマっているのだろうか。
ならばきっと近くでプロドノーズも足止めを食らっているはずだ。
上手くいった。アリスは緩む口元を悟られぬように外を向く。


だが隣のフィクルグルーバーが「分かった」と電話を切ったのと同時に事態は変わった。
前方、広場目前の辺りで、騒めきが強くなる。誰かの怒鳴り声も聞こえてきた。
ちらりと見えたのは、広場の中に入っていく黒い車。まさか―――
そのアリスの「まさか」と過った行動をこの車も起こすことになる。



「行け、フラミンゴなど気にするな」

「いえ、しかし」

「強行突破だ。出来なければ君の首が飛ぶ事になるが？」



冷酷な一言を逆らうことが出来ず、運転手は決死の思いでアクセルを踏んだ。
渋滞の行列の隙間を縫って、無理矢理高級車が突き進む。
広場前まで来ると、フラミンゴの大群がご馳走をついばむ姿も見えてきた。
先程の警備員が止めようとするのも構わず、車は問答無用で広場に入っていく。



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