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【二人目の魔術師】 ページ19

人が変わったような娘にひっくり返りそうになるポール。
一方でフィクルグルーバーにもプレゼントのおねだりの電話をするアリス。
だが最初の二人とは違い、彼には誕生日のお願いでは無かった。



「実はフィリックスさんにお願いがあるんです。
あの……恥ずかしくて言えなかったんですが……私、指輪が欲しくて……」



フィリックスさんとお揃いの。
もじもじと恥じらう様子を見せるアリスに、ポールはぎょっとする。
もしかして、本当にフィクルグルーバーの事を……？
今までそんな態度を見せた事無かったのに……？


胸の中が騒めく父を置いてけぼりにして、電話を続けるアリス。
ショックであまり会話を聞いていなかったが、今日指輪を見に行くような事を言っていた。
どうやらこれからフィクルグルーバーが此処へ迎えに来るようだ。


脱力感がポールを襲う。今日は店を営業できる気がしなかった。
それからまた楽しそうに電話を切っては、受話器を上げるアリス。
だがこれ以上電話をしそうな場所をポールは知らない。
今度は何処へ？彼は黙ったまま、成り行きを注視した。



「こちらHonest kitchenのアリスです。そちらにロッティーさんっていらっしゃいますか？」



電話相手は電話交換手？ロッティーって誰だろう。
記憶を思い起こすも、そのような知り合いに心当たりはない。
チョコ組合の三人と話していた時よりアリスの声の調子が落ち着いたような気がした事と、「Honest kitchen」を名乗った事で少し気持ちが和らいだ。



「初めましてアリスです。
もしタイミングがあればウィリー・ウォンカに伝えてほしい言付けがあるんです。
―――チョコ組合三人の足止めは、私に任せて」



凛とした、力強い声だった。
彼女のその言葉に、ポールの瞳から涙が溢れ出す。
きっとウォンカが昨夜、彼女の魔法を掛けてくれたのだ。
その後ロッティーという方と二言程やり取りをして、受話器を置いたアリスが振り返り父を見る。



「パパにもお願いがあるの！」

「な、なんだいアリス。何でも言っておくれ」

「今日搬入予定の冷凍エビ、全部分けてあげてもいい？」

「分ける？ウォンカくんにかい？」

「ううん―――」



彼のお友達に！！
キラキラを通り越して、ギラギラした瞳。引き上げられた口角。
まるで誰かを彷彿とさせるその表情に、父の心も軽くなる。



「もう一度、世界をひっくり返すの！」



息巻く彼女に、深く頷いたポール。
やっぱり今日は、営業中止だ！



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