【銀貨の行方】 ページ6
コートとシルクハットをアリスから受け取り、店を飛び出すウォンカ。
息の白さが夜の更けを教えてくれる。
店の方を振り返り、未だ恐怖の色を宿したままの彼女を見据えた。
チョコレートアレルギーについては……言及できるような空気じゃない。
「今度はちゃんとしたお客として来るよ。勿論、チョコ職人ってのは秘密にして」
「それは……いいですけど」
「その時に今日のお礼はもちゃんとさせてくれるかい？僕はチョコ職人だけど、チョコ以外も作れる。キャンディでも綿飴でもマカロンでもグミでも、君の好きな物を用意するから」
考えておいて、そう言った彼の表情はまた自信を取り戻していた。
アリスは困ったように、でも少し嬉しそうに首を縦に振る。
直後背後からまた、女性の怒声が鳴り響いた。
もう一度二人して肩を跳ねさせてから、ウォンカは「今夜は本当にありがとう。良い夢を」とコートを翻し背を向ける。
ふわりと舞ったワインレッド。
上手く形容しがたいが、何か変な人だったな。
……なんて思った刹那、彼がパッと振り返った。
失礼なことを考えたのがばれたのかと思って、彼女の心臓がびっくりと跳ねる。
「ごめん、最後に一個聞いても良い？この辺に宿はあるかい？」
「あ……えっと、そこの通りを真っ直ぐ行けば何件か並んでます」
「あぁ、こっちね。どうもありがとう」
にこやかに手を振られ、ぎこちなく振り返すアリス。
まさか宿も決まっていなかったとは。
彼の目的は知らぬが、何とも行き当たりばったりと言うか……。
ウィリー・ウォンカの行き先にどこか不安を覚え、彼女は勇気を振り絞って遠ざかる背中に叫ぶ。
「あの……！安すぎる宿には気を付けてくださいね……！
酷い所もあるから……！」
「了解！ありがとうー！」
小さくなっていく笑顔。
大丈夫だよね？と彼女の頭の中に劣悪な環境のとある宿を思い浮かべる。
少なくとも銀貨は二枚持っていたのだから。
チョコ職人がちゃんと言った通りの路地に消えたのを確認して、彼女はレストランの扉を閉めた。
だがウィリー・ウォンカは想像の斜め上を行く。
一枚の銀貨を彷徨う親子へ、最後の銀貨を側溝の下へ。
結局彼は一文無しで、劣悪なあの宿へ。
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【7:00 AM to 9:50 AM】→←【チョコレートアレルギー】
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
