【同じ星夜の下】 ページ41
人がどんな思いを抱いていたとしても、夜の星は皆に平等な明りを与えてくれる。
ぼんやりと大きな窓を眺めるアリスにも、星明りは優しく自室を照らた。
我慢の末引っ込んでいた涙が、またじわりと瞳を濡らす。
後悔の念が彼女の胸を苛む。
それが雫となり、彼女の頬を伝いシーツへと落ちていった。
「(躊躇わずに、食べてしまえばよかった)」
一つ、シーツに染みが滲む。
彼が自分の為に時間をかけて作ってくれたチョコレート。
それを味わうことなく、台無しにしてしまった。
あの時、ちゃんと受け取ってさえいれば……。
思い巡らすほど、彼女の胸の痛みが増していく。
「(彼に、冷たい態度を取ってしまった)」
二つ、反対側にも染みが増える。
咄嗟だったとはいえ、あんな言い方しなくて良かったはずだ。
きっと驚いただろうし、傷つけてしまったかもしれない。
泣いている所を見られたくなかった。重い期待を掛ける事で、彼の迷惑にはなりたくなかった。
自分と関わった事で、チョコ組合から心無い当て付けを受けるのではと怖くなった。
魔法とは縁遠い自分の現実を見せたくなかった。
彼の生きる世界はあんなにも輝いて夢に溢れているというのに、何故私の見えている世界はこんなにも無力で、暗闇に蝕まれているのだろう。
彼も同じ星夜の下を生きているはずなのに。
「(ううん。彼は御伽噺の住人で、私とは違う世界に生きている)」
少し、感化されすぎたのかもしれない。現実の世界に魔法なんてないのだ。
彼女の思考は徐々に暗闇へと落ちていく。
彼の夢の一部になれたことが嬉しくて、舞い上がってしまった。
自分の中に生まれてしまった夢や希望に理由を付けて、胸の奥にしまい込む。
魔法なんてそんなものある訳が無い。
世界が簡単にひっくり返ってしまうようなそんな事象あってたまるか。
彼女は甘い幻想を突き放す。これ以上心が傷つかないように。
別れ際の彼の悲しげな顔が過ぎった所で、後悔を数えた所で、どうせもう彼に会えることも無いのだから。
「(……これで、良いんだ)」
明日は十七歳最後の日。
いつまでも夢見心地ではいられない。私らしくない。
子守歌代わりの呪いの言葉。
全ての苦難は天命であり、人はただそれを受け入れるべきなのだと。
覚める夢など最初から無かったとーーー自分に何度も何度も言い聞かせながら、彼女は無理矢理眠りに付いた。
御伽噺、という世界観だけは肯定しているという矛盾に気付きもしないで。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
