fancy!spicy!!sweety!!!【上】

【チョコレートアレルギー】 ページ5

ミルク？ビター？キャラメル？ストロベリー？
ご希望があるなら仰せのままに。
恭しくお辞儀をする男、ウィリー・ウォンカ。
驚いた顔で固まったままのアリス。
対面する二人の間にほんの数秒沈黙が流れるが、ウォンカの「ご注文は？」という一言で彼女は我に返った。
しかし今度は彼女の発言でウォンカの方が言葉を詰まらせることになる。



「……チョコ職人って言った？」

「あぁ、最高のね」

「……あの、ごめんなさい、私、チョコレートアレルギーで……」

「え、なんだって？」

「チョコレートアレルギー。だから貴方のチョコは食べられないの。お気持ちは嬉しいけど……」



もう一度「ごめんなさい」と告げれば、ウォンカは視線を右往左往させて困惑する様子を見せた。
アリスの心の申し訳なさが更に沸き上がる。
彼の顔から自信溢れる表情は消えていて、少し間を空けてから眉を潜ませ言い辛そうに口を開いた。



「あの、でも……君のサンドイッチのソースには、チョコレートが入っていたよね……？」

「……っ」



アリスは指摘されて思い出した。
自慢のソースの隠し味のチョコレート。それを使ったサンドイッチ。
自分用にと、言ってしまった。
矛盾した供述。バツの悪さに彼女は顔を背け、目を伏せる。
気まずさを感じていたのは彼女だけではなく、ウォンカの方も何かを言おうとして止める、というのを二回ほど繰り返した。
たぶん、結局銀貨で支払おうとしたのだと思う。
彼が三度ポケットに手を突っ込んだところで、二人の肩が跳ねた。



「アリス！アンタ誰と話してるんだい！？まさかまだ客がいるってんじゃないだろうね！？」



突然、奥の階段の上から女性の怒声が降ってきたからだ。
瞬時に怯えた様な色を瞳に宿し、アリスは急いでウォンカの背を押す。
事情を察した彼も慌ててポータブル工場を片付けた。
彼女はウォンカを急かしながら、小声で女性の正体を明かす。



「うちのママ……じゃなくて、オーナー」

「そう、ご挨拶は……しないほうが良さそうだね」

「店仕舞いしてるのに人がいるのはマズいわ。しかも寄りによってチョコ職人だなんて」

「もしかしてママもアレルギーなのかい？」

「……ある意味ね」



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