【透明チョコ】 ページ36
自信たっぷりに述べるウォンカ。疑うような眼で彼を見るアリス。
彼女がもう一度目を凝らして箱の中身を色んな角度から眺める。
だがやっぱりどう見てもチョコがあるようには見えない。
「……説明してもらっても？」
「では僭越ながら」
意気揚々と空箱に手を伸ばすと、透明な何かを摘まむ様な仕草を見せる。
彼が人差し指と親指の間の空間をアリスの顔の前まで持ってくると、彼女の顔がより訝しいものに変わった。
透明なチョコレートを摘まんで、彼女に見せつけているのだ。
「チョコレートをキャンディーでコーティングして、特殊な加工で眼では捉えられないようになってる」
「まさか、そんな事出来る訳……」
「説明が難しいけど、光の反射とか屈折とかその辺の色々な話だよ。で、今君の目の前に、確かに存在してるんだ」
「誰も見たことがないってそういう……」
キャンディーコーティングのお陰で香りもしないんだ。
説明を聞いても、未だに信じられないといった顔のアリス。
悪戯っ子みたいな笑みを浮かべて、ウォンカは言葉を続けた。
「想像してみて？表面のぱりぱりしたキャンディーを噛めば、カカオの芳醇な香りが口いっぱいに広がって……。
甘くて滑らかなガナッシュが口の中でとろりと解ければ、スイートなテイストがたちまち君の魔法を解いてくれる」
チョコ嫌いなんて言葉、初めから存在しなかったかのように。
彼が微笑む。アリスの表情がまた少し柔らかくなったのを見逃さなかった。
「これなら君がチョコを食べたなんて誰にも分からない」
「でも……」
「そもそも君はこれを食べるまでチョコかどうかも分からないでしょ？」
「……？さっきガナッシュとかカカオとか言ってましたよね……？」
「……あぁ……そうだったかも」
あまり細かいことは気にしていない様子の彼。
そんな事より、とにかく彼女にこの自信作を食べて欲しくて仕方ない。
テーブル越しの彼は透明チョコを摘まんだまま、ずいっとアリスに迫る。
チョコに意識が集中していたからか、今日は後退りされなかった。
「さぁ、召し上がれ」
透明チョコを受け取るように促せば、彼女は躊躇いながらも両手を差し出す。
きっと彼女はこの美味しさに驚いて、素敵な笑顔を見せてくれるはずだ。
高揚感に包まれながらウォンカはそう、確信していた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
