【忠告】 ページ14
ウォンカはお礼を言いながらハンカチを受け取り、たんこぶにそっと当てる。
これでもう治ってしまった様な気分だったが、勿論そんなことは無い。
よろよろと立ち上がれば、彼女が支えようと手を伸ばしてくれた。
「大丈夫だよ。ありがとう」と覇気のない声で言えば、彼女の手が引っ込まれる。
「何で君がここに?」
「貴方とヌードルが動物園の方から飛んでくるのが見えたの。で、降りていった辺りで警笛が聞こえたから……」
嫌な予感がした。彼女は言う。
まさか駆け付けてくれたのか!
と喜んでいられたのはほんの僅かな間で、ヌードルの名前を聞いて大切な事を思い出した。
しまった!洗濯カート前で待ち合わせてるんだった!
「ごめん、僕もう行かなきゃ」
「あの、待って、」
「僕も君と話したい事が山ほどあるけど、ごめん」
見つかる前に戻らなくては。
脱走を手伝ってくれた彼女への一生分のチョコのお礼の用意も必要だ。
何より、チョコ販売禁止についても一から考えなければならない。
「なら、手に身近に言います!貴方の事を狙ってる人がいるんです!」
「あぁ、うん……狙われたね」
ちらり、とウォンカが上を向いた。
「だ、だから早く街を出て逃げて……!」
「アドバイスありがとう。でも、それは出来ないんだ」
「出来ないって」
アリスが「どうして」と聞く前に、ウォンカが答える。
悲痛な面持ちの彼女の心配を蔑ろにするのも心痛い。
だが、彼にも譲れない想いがあった。
母との約束。ヌードルとの約束。そして、自分自身の夢。
「この街でやりたい事があるんだ。やらなきゃいけない事も。
だから十分に気をつけるよ。心配してくれてありがとう」
「本当に……気を付けてください……特に、チョコレート組合には……」
徐々にアリスの声が小さくなる。
青ざめた顔に、寧ろ彼女の方が危機に陥っているんじゃないかと錯覚してしまう。
彼女は押さえつけてる彼の頭をチラ見してから、トボトボと歩き出した。
「あ、でもそうだ、一つだけ君に言っておきたい事が」
最後まで暗い顔だったアリスの表情を変えたくて、彼は声のトーンを上げて一つ、言葉を投げる。
振り返った彼女の眉はずっと八の字を保ったまま。
「君の望むとびきりのリクエストは二つ、考えておいて」
言い残して、彼はさっと闇の中に消える。勿論、眉の形が変わったのを確認してから。
アリスのハンカチを頭に乗せたまま、彼はヌードルの元へ急いだ。
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【which girl? that girl?】→←【ハンカチ】
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます!いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……!寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(?)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます!皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります!🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます!! (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます!楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります!💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年1月7日 21時