fancy!spicy!!sweety!!!【上】

【チョコレートを食さぬ人たち】 ページ12

彼は旅行鞄……基、自慢のポータブル工場を古びたテーブルに広げる。
色とりどりの小瓶が顔を出した。薄暗い部屋の中でも僅かな光源を反射してキラキラしている。
中身を見たヌードルが昨夜のレストランの娘と同じような顔をするので、思わず笑ってしまった。



「食後のデザートはやっぱりチョコレートでしょ。そうは思わない？」

「分からないよ……だって」



チョコ食べた事ないもん。
その一言に、ウォンカは叫んだ。それはもう、大袈裟に。
人生で一度もチョコレートを食べたことが無い！？
そんな事ある！？しかもこんな短期間に二人も！？
ヌードルが引くほど大騒ぎする彼は逆にチョコ職人魂に火が付いたようで、孤児症候群の彼女に「絶望溢れる暗闇の中に射す、一筋の光」を振る舞う事にした。今この状況に置かれる二人にぴったりのチョコレートだ。


かみなり雲と太陽に雫を調合して、完成を待つ。
その間に自身の思い出話を語っていれば、あっという間に出来上がり。
その名も、ひとすじの光。
ヌードルに「召し上がれ」と勧めれば、恐る恐る初めてのチョコレートを口に運ぶ。
だが彼女は一口だけ齧った後「……食べるんじゃなかった」と後悔を口にした。



気に入らなかった？
―――美味しかったけど、この先チョコの無い日々が辛くなりそう。
なら、これから先も毎日、一生チョコが食べれるとしたら？
―――要求は何？



話の分かる賢い子で助かった。
まるで簡単な事だと言うようにウォンカは「ここから出して」なんてさらりと言う。
勿論無理だとヌードルに却下されかけるが、大丈夫。
ひとすじの光が暗闇を照らし導いてくれる。
何かを思い出したように｢あ｣と声を上げる彼女。したり顔をするウォンカ。


彼も自作のチョコレートを口にし、画期的で素晴らしいアイデアを頭の中に描いていく。
そして二人はとある作戦を立て、実行に移す為の準備を進めた。
決行は明日。段取りを話し合っているうちに、顔色が良くなったヌードル。


やっぱり人々を笑顔に出来るチョコレートの魔法は素晴らしい。
作戦会議をしながらも彼はもう一人、笑顔にしたい人物の顔を思い出す。
チョコレートアレルギーの事は気掛かりだけれど、気にしない事にしよう。
キャンディ、綿飴、マカロン、グミ。
彼女の好みは何だろう、と頭の中でレシピが躍る。
まだ見ぬ彼女の笑顔の為に。



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