【最初の晩餐】 ページ11
ウィリー・ウォンカは今自分の置かれている現状を「あんまり良くない」と思っていた。
スクラビットとブリーチャーに騙されて契約書にサインしたのが良くなかった。
いや、騙されたとは違うか……。読めてれば問題なかったし。
待っていたのは夢描いてた暮らしとは程遠い、借金生活。
ここで暮らす娘ヌードルに「忠告したでしょ」と指摘され、昨日のレストランの娘の忠告を今更思い出した。
もしかしたらあれは、此処のことだったのかもしれない……。ぼうっとウォンカはそう思った。
ルームサービスと称して、ヌードルはビーフシチューとパンを乗せた皿を置く。
彼女が「ラッキーだね」と言うので、ウォンカは崩壊したベッドから腰を上げその意味を問いかけた。
「なにが?」
「今日のディナー。高級レストランの残り物だよ」
「残飯は残飯でしょ」
「ここで出されるのより全然マシ!Honest kitchenって所のレストランが、たまに残り物を持ってきてくれるの。こっそりね」
高級なお酒をカモフラージュとしてスクラビットさんたちに振る舞うの。そう続けたヌードル。
ふーん、と適当な相槌を打ってウォンカはビーフシチューを指で掬って舐め取る。
うん……確かに美味しい。これなら残飯だとしても晩餐として相応しい。
彼が冗談めいて言うも、ヌードルからは適当な相槌さえ返ってこない。
無言で顔を顰める彼女に彼は一瞬だけ目を逸らして、それから何事もなかったかのように話を続けた。
「優しいんだね、その……何とかキッチン。優しさに助けれられて生きてる僕にピッタリ」
「Honest kitchen。お店の人とアバカスさん、仲が良かったみたい。あまり詳しくは知らないけど」
へぇ、と軽い相槌をしながらパンに噛り付くウォンカ。
ちょんちょんとビーフシチューにパンを浸し、一口食べる度にうんうん頷いている。
昨日のシチューにも負けない美味しさだ、と彼は心の中で褒め称えた。
どっちも同一人物が作ったとは知らずに。
ヌードルの話を聞きながらある程度食べ進めた所で、ウォンカが急にガタッ!と音を立てて立ち上がる。
本当に何の前触れもなく立ち上がったので、突然何事かと驚いたヌードルが二、三歩後ずさった。
「素晴らしい料理の後は素晴らしいデザートが必要じゃないか!」
そう声を張り上げた彼を、ヌードルは戸惑いながら「何言ってるの?」と純粋な疑問を投げた。
対して、良い事を思い付いたと言いたげな顔一杯の笑みを浮かべる、チョコ職人。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます!いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……!寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(?)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます!皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります!🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます!! (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます!楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります!💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソフナー | 作成日時:2024年1月7日 21時