【仕込み】 ページ1
静かな夜。時折、冷たい風が窓を叩く。
街を覆う夜空には小さな星々の煌めき。
窓際の空気が冷たくなっていくのを彼女は頬で感じた。
それと同時に、心の中で暗い影が落ちる。
また冬が来るのか。この季節が近付いてくると憂鬱な気分に苛まれて仕方ない。
しかし気落ちしつつも、彼女の手付きが止まる事はなかった。
スピーディーかつ、丁寧に。
彼女は目の前の大鍋に切った材料を投げ入れながら、火加減を調整する。
それから別の小鍋を取り出して、ワインや調味料を煮詰め始めた。
キッチンストーブの前はすぐに良い香りに包まれていく。深呼吸すれば、微かに胸の中が安らいだ。
頭の中を、目の前の明日の仕込みにだけ集中させる彼女。
彼女の名はアリス。ここは彼女の家、兼趣あるレストラン「Honest kitchen」
一応、グルメガレリアの中心街に近い位置に佇むレストランだ。周囲ほどの高級感は……あまりないが。
もうすぐ18歳の誕生日を迎えようとする彼女は、無心に小鍋のソースを掻き回した。
焦げない様に、丁寧に。
毎日繰り返されるルーティンだ。レストランの閉店後に翌日の仕込みを行う。
少し前まではこんな同じ日々を積み重ねていくのが苦痛に感じる時もあった。
しかし、ここ数年、特に最近では、この繰り返される日が一生続けばいいのに、とさえ思えていた。
あの空に瞬く、何光年前の星々のように。
溜息を吐きかけて、また大きく深呼吸をする。
考えたくない。料理の事以外。何も。
18歳になれば正式に結婚となってしまう事なんて、考えたくない。
相手の婚約者の事なんて、考えたくない。
料理人では無くなってしまう自分の事なんて、考えたくない。
そして何よりも、このレストランが無くなってしまう事なんて、何よりも、考えたくない。
ぐるぐるぐるぐる。小鍋を掻き回す。自分の頭の中を、ぐちゃぐちゃにするみたいに。
キッチンにひっそりと響く彼女のリズム。窓を鳴らす夜風。より彼女の中に虚しさが募る。
頭を振り小鍋を火から下ろし、余ったシチューを温める。
それからこれまた余っていたローストビーフを適当に切ったパンの上に乗せた。
仕上げに自慢のソースを掛ければ、適当賄いサンドイッチの完成だ。
さぁ、あと何回私はこの自慢のソースの味を堪能出来るのかな？
あぁ、また何よりも考えたくない事を考えてしまった。
祈ったって、願ったって、どうしようもない事なのに。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
