107話 ページ32
そうやって、新しく武装探偵社の取引先となった六蔵君。彼の仕事振りは、それはもう優秀だった。
「はい、これ。頼まれてた奴な」
「相変わらず速いし、判りやすい……流石だね、有り難う」
六蔵君の仕事は本当に速い。流石に異能持ちの花袋には劣るけれど、これなら軍警でも即戦力として十分活躍できる位だ。本当に十四歳とは思えない。
私が感嘆していると、六蔵君はぷいとアロワナの水槽の方へ顔を剃らしてしまう。
「別に。あんたと違って己等には此れくらいしかできないからな」
そうは云いながらも、少しだけ耳が赤い。……可愛い。こういう所を見ると、まだ十四歳なんだな、と思える。微笑ましい。
「というかあんた、此処でぐーたらしてていいのか? 電話じゃ今日は時間があんまないみたいなこと云ってたけど」
「うん、そうなんだけど……六蔵君が可愛くて、ついつい長居しちゃった」
「可愛いとか……心にも思ってない事ほざいてる暇があるならさっさと行けよ」
「えー、本当なのに。まあ、邪魔にもなるし、お暇するね。有り難う御座いました! また依頼します!」
「はいはい、毎度」
六蔵君は此方を振り返らず、ひらひらと手を振る。冷たい。
仕事を褒めた時は照れるのに、可愛いと云っても胡乱な目をするだけなので、私は悲しい。格好いいって云われたいであろう年代の男の子に真逆の事を云う私も悪いけれど。
ちょっとした不満を抱えながらも、私は茶封筒を鞄の中に入れると六蔵君のアジトを出た。実際、今日は大切な用事があるので、あまり時間が無いのだ。
『──A、明日は新しい探偵社員を紹介するから午後は少し時間を空けておいて貰えるか?』
『へえ、新入社員さんか……正午に六蔵君と約束があるけど、その後なら大丈夫。事務員さん?』
『いや、調査員だ』
『……ふ、ふーん。じゃ、じゃあ独歩にとって初めて同じ業務の後輩ができるって事か、頑張ってね!』
『嗚呼、当然そのつもりだが……何故そんなに動揺しているんだ?』
──当然、動揺したくもなるよ。決まってる。
だって、“国木田独歩の次に探偵社員になった人物”だなんて、決まりきってる。
かつての“わたし”たちが文ストを語る時には一番に名前が出てきた人。あの人をおいて、他にいない。はやる気持ちを何とか押さえ、私は足早に探偵社へと向かった。
──だから、六蔵君が帰る私の後ろ姿をずっと見つめていたなんて、全く気付きもしなかったのだ。
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雪姫(プロフ) - 続き待ってます!!!!! (2022年3月6日 0時) (レス) @page36 id: 70f5cfe725 (このIDを非表示/違反報告)
sofaradore(プロフ) - fuさん» コメントありがとうございます。更新頑張ります! (2021年6月12日 3時) (レス) id: 89417fcd1c (このIDを非表示/違反報告)
fu(プロフ) - すごい面白いです。無理の無いように更新頑張ってください (2021年5月23日 5時) (レス) id: ac49fababa (このIDを非表示/違反報告)
sofaradore(プロフ) - MARUさん» ありがとうございます、更新頑張ります! (2021年4月6日 14時) (レス) id: 14582c6caf (このIDを非表示/違反報告)
sofaradore(プロフ) - 飴玉さん» ありがとうございます、頑張ります! (2021年4月6日 14時) (レス) id: 14582c6caf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sofaradore | 作者ホームページ:なし
作成日時:2017年8月16日 15時