【冒険王ビィト】スレッド短編夢集 (ページ3)

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「おはようスレッド！今日もかっこいいねー！」

　「ねえねえスレッド！あなた…なんでそんなに素敵なの？」

毎日想い人の周囲を幸せそうに跳ね回る少女の名は、A。想い人というのは、先程から名が上がっている少年・スレッドである。
スレッドはまたかといった様子で一瞥してから、気にする素振りもなく素通りしようとするが、Aは彼にまとわりつくように傍らに侍り続ける。スレッドが早足で歩いても、走っても、それは変わらない。
そんな2人の様子を、笑いながら眺めるのは、ビィトという少年である。丸一日ぶりに起きたビィトが寝癖もそのままに、手製の槍を担いで、「今日も仲良いなー」と欠伸混じりに呟く。

それが彼らの、ここ最近繰り返される一連の流れ……、所謂、お約束であった。

しかし。

「……あり？」

ビィトは、とある朝、異変に気が付いた。3人で過ごすようになってから何度も迎えた朝だ。ただ、いつもの賑やかさがない。

「スレッド？A？……ふたりともどこいったんだ。」

例の如く丸一日ぶりの起床で、身体を慣らしながら、ビィトは辺りを見渡した。岩肌は削れ、戦いの痕跡が見受けられる。
野宿の際はいつも、眠りこけている自分の近場に2人が居て、痴話喧嘩を繰り広げているというのに。ビィトは2人の身を案じ、慌てて近くの岩に登り、周囲を探った。

「あいつら強いし、大丈夫だとは思うけど……。」

己に言い聞かせるように呟きながら、目を凝らす。そこに、

「あ！」

求めていた人物のうちの1人が視界に入った。スレッドである。
スレッドは岩を相手に、黙々と鍛錬しているようだった。彼の才牙……例の、見えない剣を構えている。しかし、彼の金魚の糞のように引っ付いているはずの少女の姿がない。
1人でごちゃごちゃ考えても埒が明かない。ビィトは素直にスレッドに声を掛けることにした。

「……やっと起きたか。」

近寄るや否や響く低音は普段の比ではなかった。おはようの挨拶すら許さないようなスレッドの苛立ちが、鈍感なビィトにも伝わってきた。