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誘われるがまま膝に頭を乗せて、康二に向かって手を伸ばす。
俺の手を取って、
「安心せん? 後は任しとき」
俺、康二のこの、甘やかすモードの笑顔を見ると苦しくなる。
このグループでは子犬みたいに甘えん坊って立ち位置だけど、加入前…関西にいた時は、必死になって周りを引っ張る側を経験してきた大人の顔。
俺の知らない康二を突きつけられてるようで、でもどうしようもなく惹かれる自分がいて、苦しいのに目が離せない。
「ここ、暗いですか? ちゃんと写ります?」
「レフ板で調整できます。膝枕いいじゃないですか」
「えへへ、エモいでしょ」
康二がカメラマンさんとコミュニケーション取りながら上手に俺をリードして、撮影はなんとか無事に終わった。
見上げていた目に篭った熱が、写真に残っていなければいいけど。
スタッフさんたちに挨拶して、康二と廊下に出る。
「なぁ、なんか心配事でもあったん…?」
撮影が終わってから一言も話さない俺の背中に手を当てて、康二が後ろから遠慮がちに覗き込む。
こういう優しいフォローにすら、どうやったって縮まらない歳の差を感じて悔しく思う。
見上げる顔は、本気で心配してるのに。
ごめん、もう胸の内に隠すのも限界だから、康二を巻き込むことにした。
「今日、康二の家に連れて帰って」
「どうしたん、急に」
「康二の家のソファがいい」
「うちのソファでって…、」
『ソファ』という単語に佐久間くんと阿部ちゃんの撮影を思い出して、じわじわ赤くなる康二。
「佐久間くんたちみたいにしたら、康二逃げられないよね」
その想像で合ってるから、って念押しするように、背中から滑り落ちた康二の手を受け止めて握る。
見上げた世界が俺だけでいっぱいになれば良い。
みんなに愛される康二を独り占め出来るのは俺だけだって、確認させて。
「今日はOK以外の返事は聞かないから」
「ちょっ、なぁ、めめ…っ」
本当は今ここで、せめて腕の中に閉じ込めたい。
どうしようもない衝動を飲み込むように、強引に手を引いて控え室までの道のりを急いだ。
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すず(プロフ) - みなさん» コメントありがとうございます!初めて頂いたコメントに嬉しい言葉がたくさん並んでいて、どきどきしています…。また覗いてくださると嬉しいです^^ (2022年10月10日 8時) (レス) id: 042e012db9 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - いきなりコメント失礼します。いつもキュンキュンしながら読ませていただいています。完結おめでとうございます。すずさんの作品大好きです。 (2022年10月9日 16時) (レス) @page48 id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すず | 作成日時:2022年9月4日 11時