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動くと付き纏ってくる幾多の視線を気にすることなく、堂々と部屋の奥へと足を踏み入れる。

談話室の奥に見える窓は、一つ一つに精巧な彫刻が施されていて息を呑むほど美しい。
年季の入ったテーブルや椅子が点々と配置され、象牙でできたチェス盤、小さな本棚には年季を感じさせる分厚い本の数々。
まるで秘密基地のような部屋をぐるりと見渡し、素直に胸が高鳴った。
人によっては重苦しいとか、不気味な印象を与えるかもしれないけれど、俺は好き。

部屋の最奥、暖炉の揺らめく炎のすぐそばで、パチパチと薪が割れる音がよく聞こえる場所に置かれた椅子を選んだ。
静かに腰を下ろし、本棚から抜き取った古ぼけた本の表紙をめくる。

周りでは静かに息を呑む音が聞こえたが、逆に言えば、話しかけられる心配もない。






しばらく静かに本を読んでいると、人の気配と一緒に手元に影が降ってきた。

「おい」

無粋なその言葉が、まさか自分に向けられたものだと思わなかった俺は、二、三回ほどその言葉を無視してしまった。
最終的にはぐっと近づいてきた気配と影のせいで本の文字が読めなくなり、何事かと顔を上げたところで、ようやく自分が数人の生徒に取り囲まれているのだと気が付いた。

え、なに?

顔も名前知らない生徒が三人も。
揃いも揃ってガタイのいい男たちが俺を見下ろしていた。
談話室にはそこそこ人がいるのに、先ほどまでとは違う妙な緊張感が漂いはじめている。


「えっと…なにか?」
「お前、どけ」

いきなり見ず知らずの相手に「どけ」なんて、悪意のこもった言い方をされたのは初めてだった。
理由も告げず、随分な物言いである。
流石の俺だってこれには苛立ちを覚えた。

「突然、なんでですか?」
「なんでって、」

男はあからさまに狼狽えた。
まさか俺が言い返してくるとは思わなかったらしい。
思ったよりコイツ弱いな。
睨みつけるように真っ直ぐ男を見つめていると、また声がした。


「そこ、俺の席」


そんな声に「さくまさん」と男たちが口々に反応し、そして俺を取り囲んでいた空間に隙間が出来た。
一人分の空間。
男たちの後ろから、例の金色の髪を揺らしながらあの男が現れた。


「どちら様ですか?」
そう聞けば男の眉間に皺が寄る。

「お前の方から食堂で隣に座ってきたんだろうが」
めんどくさそうに喋る人だ。
俺との距離を不自然すぎるほどに詰めて見下ろす金髪の男が、あまりにもわざとらしくため息を吐くので、こっちだって怪訝な顔になる。

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みな(プロフ) - はじめまして。面白いです。ホウキとか杖とかも出てくるんでしょうか?続き楽しみにしておきます。 (9月15日 6時) (レス) id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そらちね | 作成日時:2023年9月13日 14時

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