恋セヨオトメ【黄】 (ページ6)

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岩｢俺計ってやるからもっかい走ってみ。｣

｢えっ！でも、帰るところだったんですよね？｣

岩｢いいから。ほら、スタート戻って！｣

戸惑ってる私などつゆ知らず、
岩本先輩はストップウォッチを
取りに行ってしまった。

ラスト1本やろうと思っていたから、
走ることには問題ない。

だけど、岩本先輩の前でっていうのが…

岩｢え、走んねーの？｣

｢いやっ！走ります走ります！｣

あっという間に帰ってきた岩本先輩に
軽く睨まれて、私は慌ててスタートラインへ戻った。

同じように準備をするけど、
さっきとは全く違う、異常な緊張感。

岩｢いくぞー。｣

｢は、はいっ！お願いしますっ！｣

岩｢位置について、よーい……｣

パンッ！

岩本先輩の叩いた手の合図で、勢いよく飛び出す。

ゴールだけを見据えて、とにかく足を動かした。

岩｢いいじゃん。｣

｢…はぁっ…はぁっっ…｣

岩本さんのストップウォッチに書かれた数字は
自己ベストまではいかないけど

なかなかいいタイムで、少し驚いた。

岩｢でも、走ってる時の姿勢が少し気になった。｣

｢姿勢…ですか…。｣

岩｢なんかさ……｣

この後岩本先輩は、私の走りに
たくさんアドバイスをくれた。

ひとつひとつ、細かく丁寧に。

それがもう、すごく分かりやすくて。

技術がすごい人は教えるのも上手いんだな、
なんて感心してしまった。

今日自主練してなかったら
こんなことにはならなかった。

私の中ではずっと、
怖いままの岩本先輩だったかもしれない。

1時間前の自分、よくやった。