恋セヨオトメ【黄】 (ページ5)

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先生かと思って声のする方を見ると、
そこには予想外の人が立っていた。

｢岩本先輩！？｣

岩｢あ、名前知ってんだ。｣

｢そ、そりゃあ部長ですし、
短距離界では有名ですから。｣

ていうか陸部で知らない人なんているの？

顔合わせであんな存在感残しといて、
1年生でも知ってるわ。

岩｢ふーん。で？吉田は自主練？｣

｢え、名前！｣

岩｢苺花から聞いてる。
めちゃくちゃ足の速い子がいるって。｣

｢苺花先輩が！？
いやそれ私、煽られてますよね？｣

岩｢ふははっ！煽ってねーだろ(笑)
かわいそうだなアイツ。｣

え？今笑った？

笑ったよね？ふははって結構ちゃんと笑ったよね？

昨日の岩本先輩とは別人？

…………もしかして双子！？

岩｢なに、どうした？顔固まってるけど？｣

｢えっ、えっ！いや！なんでもないですけど…｣

岩｢なんだよ(笑) なんかすげー言いたいこと
ありそうな顔してんじゃん。

ほら、言ってみ？｣

｢えー…いやぁその…｣

岩｢うん？｣

｢岩本先輩って…双子ですか？｣

岩｢はっ？なんで？｣

｢なんていうか…その…別人…？
昨日の先輩と…今の先輩が違うっていうか…｣

あからさまに小さくなる私の声。

多分、キレられるんじゃないかっておもってるから。

岩｢双子じゃねーし、昨日も今日も俺だわ。
まぁ昨日はちょっと部長感出してみたけどな？(笑)｣

｢ちょっとどころじゃなかったですけど…｣

岩｢ふはっ！ごめんごめん！
俺いっつも怖がられんだよね。｣

岩本先輩は、笑うと目が無くなるタイプらしい。

その優しい笑顔を見ていたら、

ついさっきまで抱えていた"怖い"という感情は
いつの間にか消えていた。

ラウが言っていた｢話せばわかる｣ってこういうこと？

本当の岩本先輩はこっちってこと？

頭の中では、まだ信じられていない自分と
目の前の笑顔にほっとした自分がケンカしていた。