恋セヨオトメ【黄】 (ページ1)

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4月。私の高校は突然共学になった。

言われた時は驚いたけど、
中学は共学だったし案外すんなり受け入れられて。

ただ、ひとつだけ。

この出来事は私にとって大きな変化をもたらした。

それは、やばい選手と同じ部活になったこと。

先輩のことは同世代の短距離の選手なら
ほとんどが知ってるはず。

1年でインターハイ出場、2年で全国3位。

3年の今年は確実に1位を取るだろうと言われている。

走る姿を1年の地区大会で見てから、
私にとって先輩はずっと憧れの存在だった。

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『あ、岩本先輩だ。』

｢えーあんなにでかかったっけ！｣

今日は初めての顔合わせ。

雪女も雪高も陸上部にはそこそこ人がいて、
男女を合わせると60人近くいる。

そんな中でもみんなの目線はやっぱり岩本先輩。

身長も高いから余計に目立つ。

『A、種目同じじゃん。羨ましい！』

｢そーだけど、人数多いしなぁ…｣

そう。こう見えて私も岩本先輩と同じ
短距離を専門にしている。

だからこそ、私の憧れなのだ。

『では、部長と副部長を発表する。』

雪高の顧問の先生が前に出て話を始めた。

鬼のように怖いと雪女でも有名だ。

『まず部長。岩本。』

岩｢はい。｣

1番前の席に座っていた岩本先輩が
立ち上がり黒板の前に出た。

鋭い目で教室を見渡す。

空気がピリッとした気がした。

岩｢岩本照です。よろしくお願いします。｣

そう言って顔色ひとつ変えずに、
堂々とした様子でお辞儀をした岩本先輩に
拍手が送られた。

『なんか…イメージ通りっていうかなんて言うか。』

｢……だね。｣

選手としては憧れ。それは一生変わらない。

だけど、先輩としては少し怖い。

……あんまり話したくないかも。

そんな風に思っていたことが
いつか私たちの笑い話になるなんて

この時はまだ、これっぽっちも思っていなかった。