Lily【dtnb】 (ページ7)

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secret touch.４ページ7

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カメラマンさんの指示に従って、
もう一度弾いたり、
視線をカメラに向けたりしていると

2人で弾いてみましょうかとご提案。

「隣に座る感じですか？」
「それだと手元が見えなくなっちゃうんで…
　渡辺さんはそばに立ったまま。
　寄り添って一緒に弾いてる感じでお願いします」

「こんな感じ？」

ピアノにしょうたの手が伸びてくる。

適当に鍵盤を叩くから、

「すっごい不協和音」
「だって弾けねーもん」

おしゃれ空間に似つかわしくない
不穏な音色が響き渡る。
スタッフさんからも、くすくす笑い声が漏れている。

ふいに、

指先がふれた。

ほとんど動揺しないと自負しているけれど、
鼓動が跳ね上がる。

偶然ふれたって感じじゃなかった。
かと言って明確な意図を感じとれはしないんだけど…

「いい画とれてます？」

しょうたがカメラマンさんに話しかける。
そんな滅多なことしないじゃん、いつも。

撮れてます！と応えたカメラマンさんに、

「弾いてるときに手が交差して、
　密着しちゃうみたいなのどうすか」
「いいですね！お願いします」

そして自分からポーズを提案って…
ますます滅多なことじゃない。

鍵盤に置かれた指先を見つめながら、
横にいるしょうたが読めなくて、
鼓動がざわつく。

「はい、ちょっと動きとめてください」

俺の左前腕を、しょうたの右手が飛び越えて
親指同士がふれたまま。

シャッター音だけが響く中で
左半身が妙にこわばる感覚を覚えざるを得なかった。

しょうたの行動に妙な緊張感を抱えたまま、
撮影は無事終了。

スタッフさんに丁寧に挨拶をしながら
バーを後にして、マネージャーの運転する車に乗り込んだ。

「この後は？別の仕事？」

こちらも見ずに、しょうたが聞いてくる。

やっぱり、今日何かおかしい。
些細なことだけど、いつもと違うことが多すぎる。

「これでラスト。
　明日地方ロケで朝イチ移動だから、
　今日はホテル泊」
「あー、だからこの荷物？」

後ろに積んである荷物を
一瞥するしょうたに、

「しょうた…体調悪い？」

思わず尋ねた。
だって本当に今日、違和感だらけ。

「…何で？」

質問返しされるとは思わなかった。

「いや、大丈夫なら、いいんだけど」

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