180 ページ31
.
俺がとったぬいぐるみを抱えて嬉しそうにはしゃぐAは、「お礼に」と俺の好きな缶コーヒーを買いに行ってくれた。
だから今、俺は翔太くんとふたりきり。
前みたいな翔太くんからのピリピリした視線はもうない。
お、これ見たことないアームだなぁ。どうやって取るんだろ？
この箱の角を狙って、そんでー。
渡辺「なぁ。」
深澤「ん〜？」
Aを待ちながら、新しいクレーンゲーム機の攻略を考えていると、翔太くんから声をかけられる。
渡辺「…その、……ふっかは、いいの？」
深澤「んん？なにがぁ？」
渡辺「……Aの、こと。」
深澤「A？」
何が言いたいのかわからなくて翔太くんの顔を見ると、さっき失礼なこと言ってきてた子とは思えないくらいすげぇ神妙な顔してて。
それから、「ふっかがAのこと、大切に思ってくれてるのは、わかる。だけど、……その、だからこそ、大丈夫かなって。」なんて、真剣に言うものだから思わず笑ってしまった。
渡辺「っ、なんで笑うんだよ！……余計なお世話かもしんねーけど、これでも俺なりに心配してっ、」
深澤「ふははっ。ありがとうね。翔太くん。優しすぎてお兄さん泣きそうよ。」
渡辺「……、茶化すなよっ」
翔太くんはそう言うと赤い顔を隠すようにそっぽ向いてしまう。
想いが報われないのに、優しくしてるのが不思議？かわいそう？
何度も会うのは、相手に好きになって欲しいからだって思う？
＿＿＿高校生の頃の俺ならきっと。彼が心配してくれるような感情になることもあったんだろうなぁ。
深澤「大丈夫だよ、俺は。」
笑ってそう答えても、翔太くんは「ほんとか？」みたいな顔で俺のこと見てくるけどさ。
悪いけど、ほんとよ？
深澤「もう、十分もらってるからさ。」
俺には敵わない。
あの２人の想いには。
俺はあんなに想い続けられなかったし。
好きだったけど。
だけど、阿部ちゃんのように想い続けるのは、俺にはできなかった。
自分の世界の中心にAを置き続けるのは、……俺には辛すぎて無理だったから。
Aに再会して、わかったんだよね。
深澤「俺はさぁ、自分で思ってたより２人が大切なんだよねぇ。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 522人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たぬ(プロフ) - 朝桐さん» 最後まで読んで頂けただけでも嬉しいのに、宝石みたいにキラキラした素敵な感想をありがとうございます。頂いた言葉全てが宝物です。こちらこそ出逢ってくださりありがとうございました。 (3月21日 23時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました！涙なしでは見れなくて、とても生きててよかったと、見れてよかったと。運命といいますか奇跡にただ救われました。執筆活動お疲れ様です。今後のたぬ様の日々が愛に溢れますように。本当にありがとうございました！ (3月18日 22時) (レス) @page43 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - みみみさん» お読み頂き、素敵な感想までありがとうございます。楽しんで頂けたのなら本当にすごく嬉しいです！こちらこそ、ありがとうございました！ (9月6日 23時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - 今日初めて見つけたこの作品、１話から今まで全部いっきに読みました☆本当に素敵な作品でした😊ありがとうございました！！ (9月2日 17時) (レス) @page43 id: 10d256d720 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 桜色さん» とっても優しくて愛のある感想を送ってくださってありがとうございます。どの言葉もとても勿体ないくらいですごく嬉しいです。最後まで読んで下さってこんな素敵な感想まで下さって、こちらこそありがとうございます！ (6月5日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たぬ | 作成日時：2022年8月24日 22時
