43-4 ページ4
俺はそっと彼女を腕の中から解放し、彼女の話に耳を傾ける。
話によると、京介に本当に愛されているのか分からなくなって京介に別れを切り出したところ、
納得のいかなかった京介がそれを拒んだことで二人は揉めてしまい、
いたたまれなくなった彼女が思わず街まで繰り出してしまった先での出来事だったとのこと。
「ごめんね、京介…不器用だから。不安にさせちゃったんだね」
「いえ…でも、追いかけて助けてくれた時に見た心配そうに見つめてくれる瞳に、声に。ああ、私なに勘違いしてたんだろうって、自分の誤りに気づくことができました」
「そっか…」
「どうして、こうもしないと気づかないんだろう…私って。我ながら自分の鈍感さに呆れます」
ふふ、とソファの上。自嘲気味に笑う彼女を
俺は見つめることしかできなかった。
『身寄りがないらしいんだ、この子』
愛というものが、どんなものかを知らずに育ってきたんだ。
それは、迷走してしまうわけだ。
それに、愛の伝え方を知らない京介とじゃ
この先が思いやられるなあ。
「兄さん、A…」
「京介？」
いつの間に戻ってきたのか、京介がリビングの扉から静かに顔を覗かせていた。
「目、覚めたよ。Aさん」
にこりと、京介に微笑む。
でも、俺は知ってる。
「…A。今まで悪かった」
どんなに京介が不器用でも、彼女に注ぐ愛に嘘偽りはないということを。
「私の方こそ、ごめんね…」
これから先、どんなに二人が砕けそうになってもきっと大丈夫だという不確かなようで確実性のこもった愛を。
知っている。
俺は、傍らにあった車椅子をゆっくりと自分の元へと引いてストッパーをかけると、ソファを上手く使って車椅子へ移乗した。
「お幸せに。京介、Aさん」
そう言って、抱き合う二人の手前。
俺はリビングを後にした。
▽
リクエストありがとうございました！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻田海桜 - また、更新再開してほしいです。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page19 id: 00142467d6 (このIDを非表示/違反報告)
風神ノ舞(プロフ) - お久しぶりです。って言っても覚えてなくて当然ですが、恋ふぶきで神童君をリクした元風丸渚です。リク大丈夫でしょうか？天馬君や竹見君の後で構いませんが、雪村君お願いできますでしょうか？ (2019年5月1日 17時) (レス) id: 02f1e78801 (このIDを非表示/違反報告)
みんと(プロフ) - 名前変更したのですが、すいです。お返事ありがとうございます！メインキャラでは無いのですが、竹見幸助くんなどは大丈夫でしょうか？難しいようでしたら断っていただいても構いません...！ (2019年5月1日 9時) (レス) id: 2701b73a88 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すいさん» いつも読んで頂きありがとうございます！！はい！リクエスト承っておりますよーっ！ (2019年5月1日 7時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - はじめまして、彼方さんの小説いつも楽しみにしております。突然ですみませんが、リクエストなどは大丈夫でしょうか？ (2019年5月1日 5時) (レス) id: 2701b73a88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼方 | 作成日時：2019年4月30日 14時
