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『ねえ、悪魔にとって口づけって挨拶程度な感覚なの?』
唐突な質問にバラムは湯呑を落とす。
ガシャーンという大きな音がし、静寂が訪れる。
「えっと、種族によっては・・・そうかもしれないけど・・・全種族って訳じゃなくて・・」
気遣うように、言葉を選びながら答えるバラム。
『私の暮らしてた国は違ったけど、人間界の他の国では文化も違って、挨拶な場所もある
・・・深い意味はないよ』
何となく理解したAは、話題を変えるように人間界の話で誤魔化す。
「えっと、そうなんだ・・・それはサキュバス族みたいな人間が暮らしてるって事!?」
『ん−・・・そうじゃなくて、スキンシップとか友好的だと相手に伝える感覚?理解できないけど』
「それは素晴らしいじゃない!」
『シチロウは向いてそうだよね』
「でも、待って!実際に遭遇したらめちゃくちゃ緊張する!!」
『シチロウは迫られるの、苦手だよね?』
「待って、心臓に悪いから!あの時、止めきれなかったのは僕の過失で謝るから、待って!!」
『気にしてないって言ってるのに、深刻そうだよね?』
「カルエゴ君にも説教しとくから!」
『それは是非。頼れとか言いつつ、何もしなかった事を存分に叱ってよ』
「そうだね、傍に居たのに静観してた事は𠮟るべきだよね」
『無駄に長かった説教の倍は叱ってね!』
「え、う〜ん・・・そんなに!?でも、アレとソレも伝えたら・・・」
本当にカルエゴに苦言を呈すつもりのようで、真剣に悩みだすバラム。
『色々あったからか、ココが一番落ち着く』
「・・・え、何か言った??」
Aの呟きを聞き逃したバラム。
『シチロウがカルエゴ卿に説教の図がみえない』
「さっきと違う台詞でしょ?表情が違うもん、何て言ったの??」
『安全地帯だなって』
柔らかい笑みにバラムが固まる。
「ちょっと、待って!熱ある?どこか痛い?何か変わったモノ食べたり飲んだりした??」
『・・・お母さん枠だと思うけど失礼だよ?』
オロオロするバラムを、可笑しそうにAが笑う。
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作者名:E | 作成日時:2024年1月24日 19時