堕落。《渡辺 (ページ40)

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Story…40ーEndーページ40

助手席の彼女は

ただ眠っているだけのようにも見える。

そして、俺は一人思い出していた。

(回想)

渡辺
『A。』

『なに？』

渡辺
『海って好き？』

『…急すぎない？

まぁ、好きだけど。』

渡辺
『今度連れてってあげようか？』

『えっ、本当？』

渡辺
『そんな反応して

…好きだね、俺のこと。』

『…っ。』

渡辺
『いいとこ知ってるからさ、期待してて。』

『…程々にしとく。』

渡辺
『…そりゃ残念。』

(今)

渡辺
『…めっちゃ綺麗だから。』

『……。』

渡辺
『…もうすぐ会える。』

救急隊員
『大丈夫ですか…！』

向井
『……』

救急隊員
『出血している女性は…』

向井
『…連れていかれました。』

救急隊員
『え、、』

渡辺
『……。』

『……。』

近くに車を止め、ちょうどいい高さから海を眺める。

…もちろん、彼女は俺に抱きかかえられて。

渡辺
『…Aは悪くない。』

『……。』

渡辺
『…あの時、強引にでもAを冷たい世界から救い出して

…もっと愛を伝えてれば良かったよ。』

髪をそっと撫でれば、彼女が微笑んだ気がする。

再会した時には想像できなかった

優しい表情で。

君は、俺が強く見えたり

余裕があるように思えたかもしれないけど

…俺は、弱いんだ。

渡辺
『…堕ちるなら、とことん深いところまで堕ちてしまえばいい。』

『……。』

(回想)

『…私を最後まで愛してくれる？』

渡辺
『…いいよ。』

『…あなただけの存在になれる？』

渡辺
『なれる。』

『…お願い。』

渡辺
『…ん？』

『…私のそばにいて。』

(今)

渡辺
『…A。』

…最後に、愛しい人の名前を呼んで

俺は彼女と共に深い海の底へ

”堕ちていった”

ーーーーーーーーーーEnd