45-初恋キラー実弥警官 ページ45
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過去に一度でも、自分の夢をママに伝えた事があっただろうか。
執着の様に私を勉強で縛り付けていたママ。
今ならわかる。どうして、私に勉強を押し付けていたのか。
「勉強して大学に入れば、将来役に立つから…ママは私の事を思って、ずっと厳しく言ってくれてたんだよね。
……でも、私、叶えたい、夢が出来たの」
「夢?」
「お化粧を、学びたい。人をメイクで綺麗にして、誰かの自信の源になりたい。
私が、お化粧に自信をもらったように……」
「A……」
固く握った自分の拳を、華奢で暖かい手が柔らかく包み込む。
ママの手は、こんなに暖かかったんだ。
「夢にしては駄目よ。目標にしなさい」
「……ママ!」
「貴方のやりたい事を尊重するわ」
柔和に微笑んだママの言葉を理解して思わずまた感極まって泣きそうになる。
そうか、私。ママに認められたんだ。
立ち上がった彼女は、私に背を向けて「さ、帰るわよ」と私達に告げた。
隣にいた実弥が、しゃがみこんで私と視線を合わせる。
差し伸べられた手を、私は迷う事無く握り返した。
「ちゃんと言えたじゃねェか」
「うん。実弥も、許してもらってよかったね」
「あァ」
くしゃっと無邪気に笑う彼は、出会った時と変わらない。
実弥と出会ってからの一月、目まぐるしく私の環境は一転二転した。
決して辛くなんかなかった。
……いや、辛いこともあったかな。でも、いい経験だった。
支えられながら立ち上がって、まだ少し騒がしそうな入り口へと向かう。
誘拐はされたけど、ママとも仲直りできたし、実弥との関係も許されたし、これで一件落着……。
__……あれ、そういえば私達、まだ付き合ってないよね?
「実弥、あのさ__」
思い返して振り返った瞬間、手を引かれた。
体制を崩した私と実弥の距離は一気に近づいて、それから。
顔に影が出来て、色素の薄い睫毛が、私の瞼を擽った。
「…まだ、お前に言えてなかったよなァ」
「っえ、さね……」
「__俺を夢中にさせた罪で逮捕なァ」
待って、反則。
心臓が急に仕事をしだした。
いつか私が冗談で言った、あの言葉。本当に言ってくれるなんて。
「……私のハート…押収されちゃった……」
「返さねェぞ。ずっと俺だけが持っててやる」
思考停止した私に、このずるすぎる警官はもう一度キスをした。
初恋キラー実弥警官
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時