43-終着 ページ43
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直後、閉められていた出入口のシャッターがけたたましい音を立てて揺れた。
ビクリと、私と男の肩も揺れる。
もう一度、更に二度。叩くような音でシャッターが轟いたかと思えば、鈍い音と共にそれが歪んだ。
歪んだシャッターが無理やり引き上げられる。
男は私の元から離れて、落とした刃物を慌てて拾い上げた。
「誰だッ!!」
「……っは、はァ、探したぜェ…こんな人気のねェ所選びやがってよォ、」
「さ、ね、」
額に大粒で乗っかっている汗が、彼が急いでここまで向かってくれたことがわかる。
何で分かったの。それを聞く前に、彼と同じ位汗をかき始めた男性が刃物を突き付ける。
「お前は、この子の恋人か……!」
「そうだけどォ。そいつ返してくんねェ?」
「まだ駄目だ! 私は、まだあの男に……!」
「復讐が目的なら、今すぐ会わせてやるよ」
「ッえ、実弥、」
「同じ檻でなァ」そう言った実弥はどこか余裕そうに汗を拭って。
男が首を傾げた直後、遠くでサイレンが鳴った。
「……ッお前、警察を……!!」
「犯罪は見過ごせないんでなァ」
「っクソ、!」
実弥がゆっくりと一歩を踏み出した瞬間、離れていた男は私に目をやった。
そして、覚悟を決めたようにこちらに走り出す。
刃先がこちらを向いている。
だけど実弥も、それを見た刹那走り出して。
硬いスニーカーを踏みしめた彼は、ずっと遠くにいたはずなのに、一瞬で距離が近づく。
ッえ、実弥、足……速、
ダンッッ!
「ッ痛…!!」
「観念しなァ、堀内。テメェの復讐に他人を巻き込むんじゃねェ」
「何故、名前、を……ッぐ、」
「アンタの憎い相手が吐いたぜ。奴はとっくに罪を認めて表には居ねェ」
実弥に、実弥警官に押さえ付けられた、その男性は、改めてみると父よりもずっと老けていた。
彼は実弥の言葉を聞いて、どこか、諦めの感情を瞳に含ませて顔を伏せた。
_サイレンの音が入り口で止まり、多くの警察官が中に押し入ってくる。
その中には、玄弥の姿も。
「堀内正人。銃刀法違反及び脅迫罪の容疑で逮捕だ」
制服を着た厳格そうな警官が、男性に手錠を通す。
連れられて行く中、男性は一度も私の方を見なかった。
抵抗もせず歩く背中は、私の父に会いに行こうとしてるからなのか。
震える手を、ごつごつした手がすくいあげる。
実弥はため息をついて、それから。
手を引かれ、私は実弥の腕の中にいた。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時