41-誘拐 ページ41
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今朝に痛いほど浴びせられた目はいつのまにか昼にはなくなり、苦痛だと思っていた学校も、友達のおかげで意外とあっさりと終わった。
高校生だ。ただ旬の出来事について噂したいだけ。
そもそも、私の父親に興味を持っている人なんて多くない。
「じゃあねー、A」
「ありがと、また明日」
自転車にまたがる友達と、校門前で別れる。
学校、来てよかったな。なんて、友達の存在を認識して笑みがこぼれる。
__……いつもの帰り道の路地。
人気のないそこには、見慣れない黒いワゴン車が止まっていた。
道を妨げるかのように、明らかに不自然に真ん中に停車するそれを、道の左側から避けたのだ。
「……ッえ、」
「横井Aだなッ、」
「なんっ、…むぐっ」
突然車の後ろから飛び出してきた、知らない男。
明らかに私に敵意を向けるその目は、全く身に覚えのないもので。
騒がないようにと、手で口をふさがれる。そして強引に車の後部座席に乗せられたのだ。
手を縛られた。誰も居ない。
「大人しくしてろよ」
高校生の私には、大人の男の人に逆らう力など持っていなかった。
恐怖で声が出ない。全身嫌に寒気がして、冷や汗が止まらない。
男が車を発進させる。帰りの電車と同じ方向に車は走っていく。
__車は、多分20分ぐらい走って、どこか良く分からない倉庫みたいな所についた。
縛られた腕は解放されたと思えば、すぐに近くの柱に括りつけられる。
声が反響しそうな、広い倉庫。出入口はシャッターで閉じられ、外の様子も分からない。
私を縛り上げた男は、満足そうに広い倉庫を一周し、車の中へと消えた。
「ッっ……いた、」
きつく縛られ、手は動かせそうにもない。
携帯はポケットの中だ。
……そうだ。
『__ご用件は何でしょう?』
「……実弥に、電話をかけて」
『はい、実弥さんに電話をかけます』
たった一言で起動する優秀な携帯。
無機質な呼び出し音が連続する。お願い、実弥。出て、
『……A。どうした?』
「……ッさねみ、」
『A? ……泣いてんのか?』
甘くて優しい声が聞こえた。繋がった。
彼の声を聞いた途端、我慢していたものが破れ涙が出てくる。
「っ、助けて」
『……すぐ行く。どこだ』
「わかん、ない、知らない人に、攫われて、倉庫に、」
「……誰と話してる!?」
車から戻ってきた男は、手に刃物を持っていた。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時