26-探し物 ページ26
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「あれー…? おかしいな…」
「Aどした?」
「ハンドクリームが無いの!」
いつもポーチの中に入れてる筈なのに。
スクバの底を持ってひっくり返したいけど、後が面倒だし手を突っ込むしか無い。
最後いつ使ったっけ。たしか昨日の放課後、今みたいにポーチから取り出して使って、それから公園に行って、雨が降って__。
「A」
柔らかい声と手が肩に乗せられた。
反射的に振り返って居たのは、同じクラスの炭彦君だ。
「これ良かったら使って」
「えっ良いの? わぁありがとう、困ってたんだ」
「うんー」
ふんわり軽いスフレみたいな笑顔。
彼の柔らかい物腰と喋り方が私は好きだ。
渡されたハンドクリームを手に適量取り伸ばす。
それからふと、隣に立って私を見つめる炭彦君を見た。
「これって炭彦君の?」
「うん、そうだよー」
「男の子なのにハンドクリーム持ってるなんて、女子力高いなー」
あはは、と笑ってハンドクリームの蓋を閉める。
彼にそのハンドクリームを返した時、彼の手に乗せたそれと共に手をきゅっ、と握られた。
「僕からしたら、Aの方がずっと女の子だよ」
依然変わらない柔らかな表情が、一瞬だけ緊張した面持ちに変わってそんな一言を放った。
ぱちぱち、と目を何度か瞬かせて、それからその言葉の意味を理解する。
「そりゃそうだよ。炭彦君は男の子だもん」
「…ありゃー失敗したあ」
「何が?」
「Aって時々鈍いよね」
「はーあ、解散解散!」
一部始終を見ていた友達に呆れ顔で言われる。
目の前の炭彦君も、心なしか眉を下げて私の手を離す。
一体何の事、と友達に聞こうとしたが、その前に彼女らはこちらに手を振って教室を出て行ってしまった。
「…何、どういう事?」
「ううんー何でもない。俺たちも帰ろー」
「うん」
机の横にかかっていたスクバを手に、炭彦君がもう一度こちらにやってきた。
下校ラッシュから10分過ぎても、やっぱりラッシュは治まっておらず下駄箱は人でいっぱいだ。
「炭彦君、お待たせ」
「ううんー大丈夫」
彼は何だかんだ背が高いのと身のこなしが上手いのとで、私が靴を履き替えた時にはもう昇降口の入り口で待っていた。
「何か今日正門混んでるねー」
「ふふ、何それ」
学校の門が混んでるなんて言い回し普通はしない。
でもその通りで、おかしくて笑ってしまった。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時