24-*やっちまった ページ24
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巡回から戻ると、呑気に新聞を読んでいた後輩の玄弥と目が合い、そいつは思い出したように立ち上がった。
「先輩、今さっき女の人がこれを…」
「……ンで、わざわざ…」
「これ、先輩の服ですか? あの人に貸してたとか?」
見覚えのありすぎる紙袋だ。
受け取って確信する。俺が昨日、彼奴に渡した。
玄弥にぼちぼち返事しながら、波立つ心音を隠しきれず半ば乱暴にその紙袋を自身のデスクに置いた。
何でこんな真似しやがる。普通直接渡すだろうが。
「照れ隠しにも程があんだろうがよォ…」
「それにしても、服の忘れ物とは…しかも警官宛に!
先輩、あんな美人どうやって持ち帰ったんですか?」
「持ち帰ってねェっつの。
てかテメェの目は節穴かァ? どう見たら彼奴が美人に見えんだよ」
「えっあ、あの人が美人じゃないならそれこそ先輩の目が悪いですよ!」
「どこがだァ。どっちかっつーと小動物みてェだろ」
何か玄弥と話が食い合わねェ。
未だに首を傾げる玄弥を一瞥して紙袋の中身を確認した。
確かに俺が昨日Aに貸した俺の寝巻きだ。
「……?」
端に隠れて小さなメモ書きが入ってある。
かさ、と音を立てて折り畳まれたそれを丁寧に開くと中々達筆な文字が一言だけ。
"昨日は娘がお世話になりました。"
「……やっちまったァ……」
「ど、どうしたんですか先輩っ」
名前も何も書いていねェが、女性らしい柔らかな字とその言葉だけで相手が誰であるかなんて一目瞭然だった。
その場にしゃがみ込んで頭を抱える。
そういや俺は昨日家の前で堂々と彼奴にキスしたな。
やべえ。これは完全に見られてやがる。
どこか怒りを孕んだ冷たい文字を恐る恐る折り畳み直して、深いため息を一つ吐いた。
「玄弥。お前はいつも頑張ってるなァ」
「な、何ですか突然」
「ここは一つ息抜きも必要だろ。夕方の巡回も俺が行ってやるから安心してお前は休んでろォ」
「先輩……」
「何だその疑いの目は」
信じられない様な目で俺を見る玄弥の目が居心地悪い。
とにかく、Aに会ってこの事を問い正さねェと。
着ていた制服は確か彼処の高校だったよなァ…。
思い出して頭がガンガンする。
そういやあの高校はよく苦情を飛ばしてくる問題児がいた。
「先輩、巡回に乗じて不純行為しちゃ違反ですからね」
「誰がするかァ!」
これ以上頭が痛ェ問題を増やすな。
今日は絶対に補導してやる。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時