01‐私、何かした? ページ1
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底冷えする12月の寒さが、ダウンもブレザーも通り越して体に突き刺さる。
とぼとぼと、
制服から伸びる生足が冷たい。
ローファーも心なしか、夏の時よりも固い。
「寒ッ……」
はあ、と吐いた白い息が喧騒に負けた。
駅前では、数人の男子大学生達が煙草と缶を片手にたむろしている。
やめてよ、迷惑じゃん。
心の中で彼らを蔑みながら、臆病な私は目を合わせないように気持ち速足でその横を通り過ぎた。
__寒い。体も、心も。
「家、帰りたくないなあ」
どうせ家に帰ったって、ママが待ってるだけだ。
パパはまた、お得意の"仕事"だろう。
ママが私に真っ先に言う一言は決まっている。
「門限ギリギリじゃない」
だったら、夜遅くまでの塾に通わすのはやめて欲しい。
高校2年の冬、他の皆はまだ遊んでるのに。
「………はあ」
友達と一緒に居る時は何とも思わない事が、塾帰りの一人ぼっちの時だけ、呪いがかかったみたいに憂鬱に思える。
駅前の不良たちの声も、すれ違う人のつまらなそうな顔も、カップルのイチャイチャも、……何もかも、嫌になる。
この日は、わざと遠回りして家路についていた。
どれだけ寒くても、帰ってママのちくちく刺さる小言を聞くより、突き刺さる氷の刃を我慢する方が苦じゃないと思えたから。
__駅前の大通りから曲がって少し狭くなった道路の端っこを歩いていた時、対向車線で自転車のライトがまばゆく私を照らす。
俯いていた私にとって別に大したダメージもなかったし、そのまま憂鬱な気分でローファーを鳴らしていたのだ。
「…………あー、ちょっと良いかァ」
とりわけ低い掠れた声が、すぐ近くで聞こえた。
私じゃないとは思いつつも、人間というのは静けさを蹴破る音に敏感に反応する生き物だ。
何となしに、重い顔を上げた。
「お嬢さん、高校生だよなァ?」
「へっ………はい……」
私より少し進んだ先に、さっきの対向車線に居た筈の自転車が止まっていたのだ。
自転車に跨りながらこちらへ振り返る人は、確かに私に話しかけていた。
唐突の出来事に、私は咄嗟に応答していた。
それからハッとする。
彼の頭には、紛れもなく制帽が乗っかっていたのだ。
「お、お巡り……」
やましい事なんてしていないけれど、ばくばくと心臓が早鐘を打ち始めた。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時