02-不思議な警官 ページ2
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自転車が回れ右をして私の方に戻ってくる。
徐々に近づいてくる自転車の警察官は、私の隣にぴったりくっつけると颯爽と自転車から降りた。
長い脚がサドルをまたぐ。
乗っていた時は気付かなかったけど、私の前に立ったその警官は頭一つ分くらい大きかった。
「高校生がこんな夜中までどこほっつき回ってやがった」
「……ッえ、じゅ、く……」
「あ?」
「塾です、塾……!」
こ……怖ッ!
丁度電灯の下っていうのもあってか、腰を折って私を見下ろす警官が逆光で凄みを帯びている。
ポケットに手を突っ込んで睨む動作がまるでチンピラだ。
それに、良く見るとこの人顔に傷がある……。
こんな強面で警察なんて……むしろ危険に晒されそうだけど。
失礼な事を心の中で流しながらも、表面はただの怯えた高校生なので、目の前の警官は舌打ちと咳払いを一つして、ポケットの手を寒そうに出した。
「んんっ……あー悪ィな、怖がらせてェワケじゃねェんだ。
22時過ぎてんだろォ。高校生が出歩いてたら深夜徘徊を疑って補導しなきゃいけねェんだ」
「そ、そうですか……」
「お前一人かィ? 危ねェから送って行ってやるよ。家、もうすぐか?」
「え、何で! いらない、一人で帰れます!」
「警官の仕事だ。抵抗したら手錠かけてでも連れてくぞ」
ひゅ、と息を呑むと、その人は「冗談だ」と肩をすくめて寒そうに鼻で笑った。
あ、笑うと鼻の上にしわが寄るんだ……。
ちょっと優しそ……じゃなくて!
こんな時もっと度胸があれば口答えも出来たのに。
凄む目の前の警察官に私はうん、ともすんとも言えず、ただ無言で頷くしかなかった。
「お前、こんな時間まで塾か。高3かァ?」
「違います。高2」
「へェ」
警察官は自転車を引きながらさも興味がなさそうに相槌を打つ。
家に向かって歩いているとき、「あ?」とまた警察官が低い唸り声をあげた。
今度は何だと見上げると、すでにこちらを見ていた彼とばっちり目が合う。
「家こっちなら、駅から真っすぐ歩いた方が近ェだろォ」
「っあ、……ええっと、それは…」
「あァ、コンビニでも寄ってたんかァ」
「…あ……」
左手に持っていたコンビニ袋を一瞥した警官が言う。
夜まで長い塾のお供で、学校帰りに買いました、なんて言う必要もなかったし、私は気まずい思いを胸に抱きながらその人の隣でガサガサとコンビニ袋を揺らしていた。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時