21歳と36歳の奥手な恋愛日記【中村悠一】

1:あの人のお気に入り ページ2

#5月23日(月)


久々の休日。今日くらいは静かに過ごせると思っていたのだが。

「お、中村くーん！待たせてごめんね〜！」


「や、全然待ってないっす。…で、何の用っすか？神谷さん。」


昨日の夜中に突然電話を掛けてきた先輩。神谷浩史。

"明日空いてる〜？ちょっと用事あるんだけど会えない？あはは、その用事は明日会ってから教えるよ〜！それじゃ！おやすみ〜！"

いや、自由すぎだろあんた。

掛かってきた当時はそう心の中でツッコミをいれたものだ。


「え〜〜？聞きたい〜？どうしよっかな〜？」

「帰りますよ」

俺のこの一言にも何一つ表情を変えず彼はニコニコしながら話を続ける。

「あっはは嘘だよ〜〜。じーつーは〜！これ！手に入れたんだ！」

「……これって…あの新人の子の…」

「そう！AAのサイン！！いいだろ〜！」

嬉しそうな神谷さんが俺の目の前に差し出しているのは、最近人気が急上昇している声優、AAの直筆サイン。

あれ、神谷さん、Aさんのファンだっけ？

「あ〜…すごいっすね。」

「ちょ、中村くん反応がうっすいな〜！」

Aさんのことは勿論耳に入っているが、まだ共演したことがないしどんな人なのか知らない。
そんな俺からしたら羨ましいも何もこのくらいのリアクションしかできないのだ。

「この前、Aちゃんと共演したんだけどさぁ！すげーいい子！で、可愛いの！演技もいいしあれは人気になるよ！」

「へぇ…。それで神谷さんは一気にファンになったってことですか？」

「まぁね！」

Aさんのことをすごく嬉しそうに話すもんだから俺も少し興味が湧いた。ほんの少しだが。

「それでさぁ、中村くん！Aちゃんが君の大ファンらしいんだよ〜！ほんと罪な男だねお前！」

「え、それまじですか？」

「まじまじ！そんでね、もう連絡先交換したんだけど、今度3人で呑まないかって話になってんのよ〜！どう？」


…え？

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