第26夜 ページ26
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コンコン、とノック音が耳に入る。
あいつを送り出してから数十分がたったことを考えるあたり、そろそろできたのだろう。
扉を開ければ、ふわりといい香りがする。
人間を食べる時とは別の食欲のようなものを感じ、腹の虫が鳴ってしまった。
｢私の得意料理なんだけど、……これ、分かるかな｣
生憎人間が食べる料理についての知識は持ち合わせていない、……が、皿から上がっている湯気やきらきらと光る半熟の卵、トマトのような匂いがする赤いソース。
不味そうには見えなくて、とりあえず1口口に入れてみる。
そんな俺を、Aは見守るように見詰めている。
何回か咀嚼したあと、飲み込む。
｢………めっちゃ、うまいなこれ｣
その言葉は自然と口から出ていた。
今まで人しか食べてこなかったからかなんて分からないが、少なくとも生臭い血や肉よりも、格段にこちらの方が満足感を得られる。
｢………良かったぁ〜、これ、オムライスっていうの。よく志麻に作ってて、美味しいって言ってくれて、……またそう言って貰えて嬉しい｣
心底安心したのか、ほっと一息ついて表情を綻ばせる。
正直、こんな美味しいものがあるだなんて知らなかった。
それは何回も作ってもらいたくなるわ、と人間の頃の俺に共感を送る。
それと同時に、頭の中で何かがフラッシュバックする。
『志麻ほんとこれ好きだよね、おいしい？』
『これほんま好き、後で作り方教えてや』
Aらしき人が頬ずえをつきながら俺を見詰める。
俺らしき人間がもぐもぐとオムライスとやらを食べて、ふわりと雰囲気を和らげていた。
『てか今日休みやけどどっか行く？Aが行きたい場所とかないん？』
『んー、どうせならゆったりしよ』
その映像なのか、それとも私たちの妄想なのか分からないが、流れてくる映像の中の俺が、とても優しい声をしていた。
｢______麻、志麻？｣
｢ん？ああ、ごめん、なんもあらへんよ｣
ぼーっとしていたらしく、Aの声で我に帰る。
それにしてもこんなことを考えてしまうあたり、やはり本当に俺は人間だったのかもしれない。
そう考えたら、人間の頃の俺に興味を持ったと同時に、Aとどんなふうに接していたのかが気になる。
なんでか、Aについて、もっと知りたくなってしまった。
｢なあ、教えてや、Aのこと｣
そう考えて、気付いたらこんなことを口走っていた。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
