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自分で自分の口を疑った。
私が自分が行ったことの意味を理解するのは、目の前の浦田くんの表情が途端に明るくなったのを確認した時だった。
勢いよく手を取られ、暖かい手が私の手を包む。
「……嬉しい、本当に、嬉しい。ずっとそう言ってくれるのを待ってたんだよ」
「ほんならこれからどうします?全員で同居でもしてみる?」
「まーしぃそれは気が早いって〜!……それはもっと、Aが俺らと離れたくないって言うようになってから、な?」
「ま、俺は元から一緒なんやけど。時間はたっぷりあるんやし、そんな焦らんとゆっくりじっくりいきましょうや」
会話についていけない。
四人で進められていく話に私は入り込むこともできないまま、ただやり取りを見詰めるばかり。
センラの言葉に他の三人が同意の意を示したところで、それぞれがもう一度私に向き直る。
浦田くんは掴んでいた手をするりと撫で上げ、手首へと軽い口付けを落とす。
それだけじゃない。
志麻くんは鼻先へ。
坂田先生は首筋へ。
センラは喉元へ。
僅かながらもくすぐったい感覚に逃げ出したくなるが、それは叶わない。
だって、私は、もうそれを喜んでいるんだから。
表面上ではいくら抵抗しようとしたって、私の根本部分はそれを欲しがっている。もっと、と求めている。
それを自覚してしまった今、私はもう黙って彼らからの愛情を受け止めるしかない。
それがどんなに多くても、溢れそうになってしまおうとも、壊れそうになっても、受け入れてしまうんだろう。
「それじゃあ……これからよろしくね?」
「大好きやでA、たくさん愛したるからな」
「どうしよ、今俺な、嬉しくてAのことめちゃくちゃにしてまいそう」
「もう我慢なんかせえへん、絶対離したらん」
これからどうなるのかなんて私には分からない。
でもきっと、私は溺れてしまう。
彼らからの愛に。
しかし、その頃にはそれすら愛おしくなるんだろう。
もう、元の生活には戻れない。
けれど貴方達からの愛なら、どれだけ多くても飲み込んでみせよう。
返事代わりに、手をぎゅ、と握り返した。
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瑠璃色(プロフ) - コメント失礼します!すごい甘くて溶けそうでした…楽しく読ませていただきました! (2020年1月22日 4時) (レス) id: c270fd437e (このIDを非表示/違反報告)
夏乃(プロフ) - コメント失礼致します! とてもドキドキしながら作品を読まさせて頂きました!メンバーそれぞれのお話もワクワクドキドキでした!お話の途中からまさか4人は裏で繋がっていたりして…!と予想したりしていて楽しかったです! (2018年10月5日 3時) (レス) id: 18d0eaa0c8 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - maikanoさん» コメントありがとうございます!各ルートはいつか形にしたいなとは思ってるので気長にお待ちください!maikanoさんが少しでもドキドキできるようなお話を届けられて良かったです、見ていただきありがとうございました! (2018年10月4日 0時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - 瀬菜(せな)さん» わーありがとうございます!何とか完結できて良かったです…!!新作公開しましたのでお時間ある時にでもよかったら除いてやってくださいー! (2018年10月4日 0時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
maikano - とても面白かったです!欲を言うと全ルートみたいですね…(全員から愛されるルートとか、うらたんルートとか…)読んでてすごくドキドキしてものすごくよかったです! (2018年10月3日 15時) (レス) id: f3f6e9dc4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:史緒 | 作成日時:2018年9月10日 22時