愛情過多【浦島坂田船】

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何だろう。
疑問符が私の頭の中に浮かぶが、告白を断った以上できることはしたいと思いこくりと頷く。
顔を上げた浦田くんから特に変わった様子は見られない。
しかし、その瞳は私をしっかりと見据えていた。



｢他に好きな人がいる、ってこと？｣

｢う、ん。……でも、その人と付き合うわけじゃないよ、その人の告白も断る｣


頭の中に3人の顔が浮かぶ。
納得させられるかな、なんて今から心配しても仕方ないのだけれど。


｢俺の事、嫌いってわけじゃないんだよね？｣

｢もちろん、嫌いじゃないし、むしろ好きだよ、…でも、だめなの｣


少し、ほんの少し眉を下げた浦田くんに心が締め付けられる。
嫌いになれたら、こんな感情も持たなかったのかな。

そんな心配をしたのも束の間で、私の返事を聞いた途端、浦田くんはもう一度私を見詰めてくる。

でも、なにか、違う。

さっきとは違う、心の奥底まで見透かされるような、そんな視線。
逸らしたい、でも逸らせない。



｢もしかして戻れると思ってるの？元の生活に｣


｢………え？｣


｢今日一日中ぼーっとしてさ、バイトの時も俺から全然話しかけられなくって、あんなに寂しそうだったのにさ｣



質問の意味が分からない。戻れると思ってるか？
戻ろうと思って私は告白を断った。なのに、なんでそれを聞くんだろう。

そう思って、私はふとバイトの時を思い出す。
____あの、不安は、あの、違和感は。
心に穴が空いたようなあの感覚は、浦田くんと話さなかったから………？

それだけじゃない、センラとも志麻くんとも坂田先生とも話してない。
だから、私はあんな事を考えてたの……？



気付きたくなかった事に触れてしまい、思わず二、三歩後ずさりする。
そんな私の様子を浦田くんはただただ見詰めるばかり。
それがなんだか怖くて、でも綺麗で、私はただ、逃げたくなった。
一歩、また一歩後ろへ下がる。





｢ねえ、Aちゃんの好きな人ってさ、___もしかしてああいう人達？｣





距離を取ったはずなのに、はっきりと浦田くんの声が耳に入る。
浦田くんの目は、相変わらずこちらを見詰めていて。……でも、今度は私じゃなくて、その後ろを見詰めていた。


後ろに下がっている中、とん、と背中に何かが当たる。

行き止まりなんてなかったはず、それに、この感覚は、壁なんかじゃない。
_____人が、いる。





｢もう一度聞くね？｣



｢俺らがいない生活に、戻れると思ってるの？｣



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