よく食べよく眠り10 ページ40
じゃあこの部屋はそのひとらんらんがいるのか。同室は誰だろう。
「……はい」
「失礼するよ」
今しがたひとらんらんと話していたらしい少年には、やはり名乗ってもらった記憶がなかった。明るい茶髪と眩しいイエロー。
「こんばんは。二人の名前と、綴りを確かめに来たんだ」
「名前？ あっ、でも、あっちのひとらんは」
「あぁ、さっき聞いたよ」
無言でこちらを伺う少年に、一瞬考えて声をかける。
"こんばんは"
「……!!」
意表をつかれた顔が面白くて笑うと、彼ははっとして口を開く。
"私の国の言葉がわかりますか？"
"ほんの少し。上手くはない。あなたの名前は何？"
「……、……。ひとらんらん」
"ひとらんと呼んで"という答えに納得して名前を書く。茶髪の少年が目を見開いて訊ねてくる。
「東の言葉がわかるんですか」
「仕事で会うからね。君の名前は？」
「俺はシャオロン」
「？ 君も東の出身？」
「血だけが、そうです。育ったのはこの国」
「そうか。綴りはこうかい？」
手元を覗き込んでニコッと笑う。
「合ってます、たぶん！」
この子も読み書きができないタイプかな。
「わかった。ありがとう、また明日。おやすみシャオロン、'おやすみひとらん'」
「おやすみなさい」
"おやすみなさい"
二言語の挨拶に手を振ってドアを閉めた。
となると、最後の部屋はあの子とあの子か。
「はい、ただいま」
「あぁ別にいいよ」
また室内の人を待たずに足を踏み入れる。そこにいたのはやはりトントンと水色の髪の少年だ。
「遅くに悪いね。名前の綴りを訊きに来たんだ」
「名前、ですか？ わかりました」
書き付けを見せて、こうかと訊ねる。そうですと答えたトントンは他の面々の名前にも目をとめたらしい。
「全員にきいていらっしゃるんですか」
「名札作りに要るんだ。早く名前を覚えてもらえるに越したことはないからね」
「名札……」
「そう。アガタやじいやが付けていたやつだね。……さ、君は？」
「んぅー……」
最後の一人、もうずいぶん眠そうだ。ショッピといいこの子といい、彼らは年少の方が肝が据わっているのかもしれない。ふっと笑って髪を梳く。
「あ、そいつはチーノです。申し訳ありません、もう寝そうで」
「こんな時間に来ているのは私だから。……綴りはこうだね」
「ええと、はいそうです」
「じゃあこれで全員か。明日中には渡そう」
「ありがとうございます」
「いいさ。おやすみ」
「おやすみなさいませ、A」
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咲季 - 1000票目頂きました…！面白かったです。続編も読ませていただきました！！ (2022年1月10日 19時) (
レス) @page1 id: 96347ca1af (このIDを非表示/違反報告)
ﾅﾐｦの家のあろさうるす - オークションパロってはじめて見たんですが、とっても素晴らしいです！更新待ってます！マンちゃんがかわいくて尊さに耐えきれず死にそうになりました！ (2020年4月4日 19時) (レス) id: 2e27670cb5 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - bhさん» ありがとうございます！ 続編出来ました！ まだお待ちいただけてるでしょうか……？ 良かったら読んでくださいね！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - キャラメル中毒者さん» コメントありがとうございます！ 続編投稿致しました！ 楽しんでいただければ幸いです！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、気長に更新待ってます、応援してます。 (2019年12月24日 12時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吉野あまみず | 作成日時：2019年8月22日 6時
